自閉症スペクトラム障害児における脳活動の特徴を捉えることに成功

掲載日:2016-1-6
研究

子どものこころの発達研究センターの髙橋哲也特任准教授,三邉義雄教授らの研究グループは,産学連携のプロジェクトで開発した幼児用脳磁計(MEG:Magnetoencephalograghy)を活用し,幼児期の自閉症スペクトラム障害児における脳活動の特徴を,新しい解析法を用いて捉えることに成功しました。

近年の研究から,小児期自閉症スペクトラム障害(※)に関連する脳の機能的な特徴の一つに,神経ネットワーク活動の過活性が指摘されています。今回の研究では,3~9歳の自閉症スペクトラム障害児と健常児を対象に,DVDを鑑賞している最中の脳活動をMEG(図1)で測定し,最先端の複雑性解析技術である「マルチスケールエントロピー解析」を用いて神経ネットワークの観点から比較を行いました。その結果,自閉症スペクトラム障害児では神経ネットワークが過活動になっており(図2),その特徴は幼児期においてより特徴的であることが明らかになりました。また,臨床症状との関連では,脳の前方部における活動の低下がコミュニケーションスキルの乏しさに関連していることが分かりました(図2)。このように,小児用MEGとマルチエントロピー解析を用いて評価し,小児自閉症児における脳内の神経ネットワーク活動と臨床症状との関連性を示したのは世界で初めての報告となります。本技術では,幼児に恐怖感を与えず,わずか5分程度で,脳の機能的発達について検査を行えることから,将来的には集団検診でも手技的に応用が可能になります。

本研究の成果は,12月21日に「Human Brain Mapping」(米国科学雑誌)オンライン版に掲載され,また,今後発行される同誌冊子体に掲載される予定です。

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[図1]
MEGによる測定の様子

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[図2]
自閉症スペクトラム障害児における,脳活動が上昇していた脳部位(左図の赤い部分)と臨床症状と関連する脳部位(右図の青い部分)

 

※自閉症スペクトラム障害

対人関係やコミュニケーションの発達障害が主な症状であり,自閉症,アスペルガー症候群,特定不能の広汎性発達障害などが含まれる障害。有病率1%前後という高さで,幼少期には明らかになる障害であるにもかかわらず,自閉症スペクトラム障害に関連する幼児期の脳機能について,ほとんど明らかになっていません。

 

詳しくはこちら

Human Brain Mapping

研究者情報:髙橋 哲也

研究者情報:三邉 義雄

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