子どものこころの発達研究センターの三邉義雄センター長(医薬保健研究域医学系 教授),菊知充教授,長谷川千秋博士研究員らの研究グループは,大阪大学大学院工学研究科の浅田稔教授らの研究グループ(脳磁計(Magnetoencephalography: MEG)(図1)の同時計測システムの実装を担当)と協力し,世界で唯一金沢に設置されている,親子同時測定が可能な脳磁計を活用し,自閉スペクトラム症幼児とその母親が見つめ合っている最中の脳の活動を調べたところ,以下の3つのことが明らかになりました。
1.症状が重い自閉スペクトラム症では,「見つめ合う」ことで生じる脳の反応が低下している
2.自閉スペクトラム症幼児の脳の反応が低下している場合,母親の脳の反応も低下している(図2)
3.見つめ合い中の母親が子どもに合わせてうなずくといった動作をした場合,母親の脳の反応が強い
親と子どもが見つめ合っている間,無意識の間にも,膨大な量の社会的な情報のやり取りがなされています。すなわち,相手の表情を理解し,新たに感情が生まれ,そしてそれが自らの表情に表れ,相手に影響を与えるという双方向性の情報交換が絶え間なく続いています。親子が見つめ合っている間の双方向性の交流は,子どもの社会性の成長において,とても重要な役割を果たしていると考えられています。
今回,親子が見つめ合う状態で脳機能を同時測定できたことにより,子どもの社会脳の発達を解明する一つのステップになると期待されています。
本研究成果は,米国の科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に日本時間10月10日午後6時に掲載されました。なお,本研究は,文部科学省の「特別推進研究:代表浅田稔教授」および一部,科学技術振興機構「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」(サテライト金沢大学代表研究者:三邉義雄教授)により行われた研究の成果です。
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Scientific Reports
研究者情報:三邉義雄
研究者情報:菊知充