平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を本学の教員2名が受賞しました。
<科学技術賞(研究部門)>
我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は発明を行った個人又はグループを表彰
大島 正伸 がん進展制御研究所・教授
[業績名] 胃がん自然発生モデルを用いた胃発がん分子機構の研究
胃がんは日本のがんによる死亡原因第2位であり,その克服のためにも胃がん発生の本態解明は重要な研究課題となっています。胃がん発生にはピロリ菌感染に対する生体反応が密接に関わっており,そのためにヒトと同様の分子機構で胃がんを自然発生するマウスモデルの開発が困難でした。
本研究では,ピロリ菌感染に起因して発生する炎症反応の原因となるCOX-2/PGE2経路を活性化させ,発がん経路として重要なWntシグナルを同時に胃粘膜上皮細胞で活性化させる事により,ヒトと同じ組織型および遺伝子発現プロファイルの胃がんを自然発生するマウスモデルの開発に成功し,炎症反応依存的に胃がん細胞の増殖や生存を促進する分子機構の解析が可能となり,実際にいくつかの新規胃がん発生分子機構を解明し,胃がん発生予防薬の可能性のある標的分子の同定に至りました。
本研究成果により,胃がん発生に対する抗がん剤,予防薬の開発研究推進により,将来的にはがんによる死亡者数の減少に貢献できる事が期待されます。
<若手科学者賞>
萌芽的な研究,独創的視点に立った研究等,高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績を挙げた40歳未満の若手研究者個人を表彰
松木 篤 環日本海域環境研究センター・准教授
[業績名] 鉱物エアロゾルの動態解析および雲との相互作用に関する研究
大気中に存在する微粒子(エアロゾル)は雲ができる際に不可欠な雲核や氷晶核として働くため地球の気候に大きな影響を与えていますが,特に黄砂に代表される鉱物エアロゾルの輸送の実態や雲との関わりについては十分理解されていませんでした。
本研究では,航空機や気球などを駆使した試料採集と,分析電子顕微鏡による詳細な形態観察,組成分析を組み合わせることにより,鉱物エアロゾルの一部が大気の流れとともに長距離運ばれる過程で著しい物理的,化学的な変質作用を受けている直接的な証拠を示すことに成功。これは,鉱物エアロゾルが従来考えられていたよりも高い雲核活性を持ちうることなどを示した点において重要な知見を与えるものであり,地球温暖化予測上の最も大きなハードルとして認識されているエアロゾルの気候影響解明に向けた貢献が期待されます。