動物と植物に共通の幹細胞化誘導因子を発見

掲載日:2017-1-30
研究

これまで,動物と植物は独立に進化してきたことから,それぞれ異なった仕組みで幹細胞が作られると考えられてきましたが,基礎生物学研究所/総合研究大学院大学の李琛(リ チェン)大学院生,玉田洋介助教,長谷部光泰教授,名古屋大学の佐藤良勝特任講師,金沢大学の西山智明助教らを中心とした研究グループは,コケ植物ヒメツリガネゴケの低温ショックドメインタンパク質(Cold Shock Domain Protein: CSP:※1)遺伝子がヒメツリガネゴケの幹細胞化を誘導することを発見し,さらに,この遺伝子は哺乳類のiPS細胞(※2)誘導遺伝子の一つであるLin28と同じグループの遺伝子であることも見い出しました。これは幹細胞化を誘導する,動物と植物に共通の遺伝子の初めての発見です。

今後は,CSP遺伝子の機能を詳しく調べることによって,動物と植物の幹細胞形成の共通性と多様性が明らかになってくることが期待されます。また,植物は動物に比べ,できあがった細胞を簡単に幹細胞に戻せるのはなぜかという,より根源的な疑問の解決にも寄与することが考えられます。

本研究成果は2017年1月27日に国際学術誌“Nature Communications”(ネイチャー・コミュニケーションズ)に掲載されました。なお,本研究はJST戦略的創造研究推進事業 ERATO,科学研究費補助金,頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラムなどの支援により行われた研究の成果です。

図1 葉の細胞が原糸体頂端幹細胞に幹細胞化する過程で,PpCSP1に蛍光タンパク質をつないだ融合タンパク質が幹細胞化する細胞で発現し,原糸体頂端幹細胞になった後も発現し続ける。


図2 動物のLin28遺伝子産物(タンパク質)とヒメツリガネゴケPpCSPならびに関連遺伝子産物の系統樹。橙色は後生動物,青は真正双子葉類植物,ムラサキ色はそれ以外の被子植物,茶色は小葉類イヌカタヒバ,緑色はコケ植物ヒメツリガネゴケの遺伝子。

 


※1 低温ショックドメインタンパク質
もともとは大腸菌が低温にあったときに低温に順応するために作られるタンパク質として研究が進んだ。その後,温度変化への順応以外に,乾燥,塩などいろいろな環境変化によっても誘導されることがわかってきた。


※2 iPS細胞
人工多能性幹細胞のこと。分化した体細胞が,いくつかの遺伝子を誘導されることによって,自分自身とともにいろいろな種類の分化する細胞を創り出す能力を持つように変化した細胞。

 

詳しくはこちら[PDF]

Nature Communications

研究者情報:西山智明
 

 

FacebookPAGE TOP