オーストラリア シドニー工科大学

掲載日:2024-7-16

シドニー工科大学

2022年度 オセアニア〈オーストラリア〉

R.N.(国際学類 4年)

はじめに

私は20232月から202312月までシドニー工科大学に留学していた。工科大学と言っても総合大学(UTS)でGlobal governanceCulture of Globalizationといった国際関係の授業を履修することができる。学生は国内出身者から正規留学生まで様々なルーツを持っている人が多い。

留学準備

留学準備にあたって語学スコアの取得は事前に行っておくとよいと強く思う。派遣留学の応募自体はIELTS5.5があれば行えるが学部授業を履修するには6.5が必要だった。そこで私は留学開始の学部2年夏からスコア取得に向けた勉強を開始し、その年の秋に初めて受験した。私は余裕をもって行ったつもりだったがもう少し早くから行っておけばよかったと後悔している。と、いうのも私がオーストラリアに応募したのはオーストラリア「しか」選択肢がなかったからだ。以前はヨーロッパの大学も検討していたがIELTSのスコアを持っていなかったため応募できなかった。IELTS5.5の取得はそこまで難しくないので後輩の皆さんには臆病にならずに早めに挑戦してみてほしい。

留学経験

留学中は学業と異文化理解に力を入れた。UTSで最も興味深かった授業はGlobal Governanceだ。なぜなら国境を越えた問題に取り組む際に、市政府・国政府・国際機関といった異なるレベルの政府機関をどう協力させるかということを主に行っていたからだ。オーストラリアの視点から世界を見るため取り扱う問題や国が金沢大学とは大きく異なった。この授業は予習がとても多く毎週論文4050ページ読まなければならなかった。最初はとても時間がかかり苦労したが、何回も行っているうちに読むスピードも速くなっていった。レポートも最初は1000ワードのレポートを書くのは無理だと考えていたが、何本か書いていくうちに慣れて書けるようになった。友人に英語の添削をしてもらったり、サポートセンターに行って内容のアドバイスをもらったりした。その友人は優しく、深夜3時まで勉強に付き合ってくれ、英語だけでなく論理構成についても助言をくれた。今では彼は最も尊敬する友人の一人だ。また、課題の一つにリフレクションというレポートがあったのだが、素晴らしいと思った。この課題では①授業前の考え ②授業やグループワークで得た経験・知識 ③今後どう生かしてゆくか について考える。これらを通じて無意識に持っていた偏見に気づいたり、自己理解ができたり、経験を言語化するスキルを得ることができる。UTSではグループワークの度にリフレクションを書かされる。この経験は必ず、今後の勉学において役に立つと思う。なぜならリフレクションを行うことで授業内容と自分を結び付けることができ、知識を生きたものにできるからだ。また、どの授業にも共通して面白かったのが先住民の視点をいつでも取り入れていたことだ。例えばSustainability in contextという授業では持続可能な社会について考える授業だが、先住民の自然に対する価値観を授業で取り扱った。これらはいかにオーストラリアが先住民に注意を払っているかを示しており、日本のアイヌ民族に対する態度を考えさせられた。 

異文化交流はサークル参加や地域イベント、友人との会話を通じて行った。例えば、最も印象深いサークルがCridoというキリスト教サークルだ。これまでの人生で宗教について深く考える機会があまりなかったため、留学を機会にキリスト教やキリスト教徒について学んでみたいと思ったのだ。週1回1時間サークルのメンバーで聖書を読み、その意味を理解したりや日常生活に当てはめて考えたりした。私は聖書を読んで人生の教科書のようだと思った。2000以上前に書かれた教えが現在の私たちの生活に通じることにとても驚いた。またキリスト教徒達はとてもやさしく、ウェルカムな雰囲気を持っていた。時間を気にせずに何度も基本的なことから私に教えてくれた。一緒にスポーツをしたりランチを食べに行ったりして仲良くしていた。一方でそんなcridoでも宗教の違いを理由にキリスト教徒とそうでない人を明確に区別したことがあり、驚いた。イースターキャンプ時、ワインとパンのかけらを食べる機会があったのだが、キリスト教でない人はその儀式に参加できなかった。キャンプ全体は信仰の有無関係なく聖書について学んだりゲームを楽しんだりしていたのだが、この儀式は彼らにとって譲れないラインなのだと思う。宗教を理由にラインを引かれたのはこの儀式が初めてで衝撃を受けた。これらの経験は現地に行って直接当人たちと深くかかわらなければできない経験だったと思う。また、地域のイベントに行ったのも良い経験だった。シドニーでは2月ごろにマルディグルパレードと呼ばれるLGBTQの権利に関する運動が行われたのだが、金沢のプライドパレードよりもずっと過激で興味深かった。また友人の一人が恋バナをする際に「まず男性が好きか聞かなきゃね」とあたり前のように言っていたのを聞いて驚いた。彼女の一言で性的指向に対して偏見を持っていたことを気づかされた。

今後の展望

今後の大学生生活では3つ行いたいことがある。1つ目は語学試験の受験だ。留学を通して得た語学力をスコアとして残し、今後の就職活動や大学院進学に行かしたい。また試験の受験を通して語学力のメンテナンスもできる。2つ目は大学の授業外の学習だ。UTSでは常に授業外の学習を求められ、授業内容のより深い理解につながった。そこで今後も講義内容に関連のあるニュースや予備知識を入れて授業に臨みたい。これによって課題やグループワークにも自信を持って臨むことができると考えられる。また日ごろからリフレクションを行いたい。リフレクションは自己理解や知識を生きたものにすることにつながるため、講義内容を生活の中に適応することができるようになる。3つ目は海外大学院進学の検討だ。留学を通して英語での授業は大変だが何とかついていくことができると分かった。私は国際関係や国際公共論について深く学んでみたいため、国際機関の発祥地であるヨーロッパまたは交換留学先だったオーストラリアを検討したい。

留学で得た経験は心から宝物だといえる。出会った友人達、UTSの授業、異文化とのふれあい、英語でのコミュニケーション。これらすべてが私を人間的な成長、専門知識の取得、語学能力の向上、異文化理解をもたらしてくれた。皆さんにもぜひ留学を経験してほしい。後悔は絶対にしないと思う、臆さずに頑張って。

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