ユバスキュラ大学
2023年度 ヨーロッパ〈フィンランド〉
I. M.(人間社会学域 学校教育学類 4年)
私は2023年の8月から2024年の12月の約5か月間、フィンランドのユバスキュラ大学に留学していました。留学先を決めた理由は2つあります。1つは、以前高校生だったときにフィンランドに短期留学をしたことがあり、そこで出会った人々やフィンランドの文化に魅了され、いつか必ず長期で留学したいと思っていたからです。もう1つは、私自身が教育を専攻しているため、質が高いと言われているフィンランドの教育について、理論・実践の両面から深く学びたいと考えていたからです。
ここでは、留学前のこと、留学中のこと、帰国してからの3つに分けてお話しします。
留学前の準備として大切だと感じたことは2つあります。1つは、ビザ(在留許可)申請や留学に関する手続きなどを入念に、余裕を持って済ませておくことです。私にとってはこれが最も苦労した点であり、全ての手続きを終えて留学を無事にスタートさせるまでが留学において最大の壁でした。ビザだけでなく、複数の奨学金の申請や留学先での履修登録、航空券や移動手段の確保、現地での家賃の振り込み手続きなど、留学前からやらなくてはいけないことの多さとその煩雑さに驚きました。
もう1つは、実際に同じ国、大学に留学した先輩とのつながりをもっておくことです。実際にかかる費用や大学の授業のことから、寮の選び方、現地で必要なもの、おすすめの交通手段などを教えてもらいました。不安や疑問に感じることは小さなことでも聞くことができます。そのおかげで、留学に対する解像度が高まり適切な準備ができたと感じています。
留学中は、主に大学での授業と、友達と過ごす余暇、旅行の3つが生活の大部分を占めていました。
私は、授業の単位数を標準より少なめに履修していました。理由は、自身の英語力に不安があったので、予復習にしっかりと時間をかけたかったからというのに加えて、フィンランドでの生活や友達との余暇の時間を大切にしたかったからです。フィンランド語の入門授業や、実際に現地の小学校に入り、参観やサポートを行う教育実習のような授業も履修しました。数は少ないですが一つの授業に割かなければならない時間数が思った以上に多かったです。また、講義形式の授業は少なくディスカッションやプレゼンテーションを求められるものが多かったです。履修した中には難易度の高い授業もあり、友達に助けてもらいながら途中までは頑張りましたが、先生と相談して最終的に履修をやめた授業もありました。
また、私は留学生が多く住む学生寮に住んでいたので、毎日のように友達と夜ご飯を作って食べたり、友達を誘って寮についているサウナやジムに行ったり、留学生向けのイベントに行ったりしました。
友達関係では、何事も「自分から」を大切にしました。自分から食事やサウナに誘う、映画鑑賞イベントを企画してみるなど、待つだけでは何も始まらないので、「この子と仲良くなりたい」「みんなでしてみたい」と思ったことはすぐに行動に起こすことを心がけました。海外の友達もたくさんできましたが、日本人留学生との繋がりができたこともよかったと感じています。毎日、異文化や他言語に触れていると時には疲れることもありますし、日本語でしかできないような悩みを相談したい時もあったので、海外の友達と自国の友達付き合いは、自分で居心地良いと感じられるバランスを持っておくことは大事だと思います。
語学力については、日常会話や友達との相談、議論など、コミュニケーションをメインに据えた英語力はかなり向上したと感じました。しかし、授業で使用するようなアカデミックな英語はまだまだ苦手だと感じています。なぜなのかは、生活を振り返れば明らかでした。
ここからは少し抽象的な話になってしまうのですが、自分は留学において何を達成したいのか、どんな自分でありたいのか、どのような時間の使い方をしたら満足できるのか、など、自分自身についてしっかり理解しておくことは大事だと考えます。留学先で感じたこととして、意欲のない留学生はほぼいないと言っていいくらい、みんな何かを頑張っています。授業をたくさん取って専門科目の勉強に励む学生、英語力の向上に励む学生、とにかく新しいコミュニティに飛び込み人脈を広げる学生、自然体験や旅行を重ねて視野を広げる学生など、周りを見るだけで真似をしたいくらい素敵なことをしている人が溢れていました。ですが、時間は有限です。全てを頑張ることは難しいので、大事にしたいこととその度合いを自分自身で決められたら良いと思います。
具体的にどうしたかと言うと、私は毎月、目標と理想の過ごし方、ToDoリストを設定して、紙に書いたものを部屋の壁に貼っていました。例えば、最初の月は「慣れる、広げるフェーズ」として「無理せず生活に慣れる、いろんな人と出会ってみる、住んでいる街のことを知る(自然やお店などを開拓する)」を目標にして、ToDoリストには「海外の友達をサウナに誘ってみる」「○○のカフェに行ってみる」「友達と図書館で勉強する日を作る」などを書き、達成したらチェックしていました。これがあるだけで、自分の現状と目指したい方向性が分かり、「このままでいいのかな」というような謎の不安に襲われることが少なくなります。フィンランドの人々の暮らし方を見たおかげで気づけたことでもありますが、一人で過ごしたり、何もせず休むことも自分のためだと肯定できるようになったと思います。
授業のみならず生活全体を通して、振り返ってみると周りの友達に助けられた、又は協力したから乗り越えることができたことは山のようにありました。授業や英語がわからない時はすぐ先生や友達に聞く。スーパーで困ったら通りすがりのファミリーに話しかける。フィンランドでの生活で困ったら現地の友達を頼るなど、周りには必ず助けてくれる誰かがいます。不安になっても一人で抱え込まないことが大切です。
最後に帰国してからのことについてです。
もともと帰国後は教員採用試験を受けることを視野に入れていたので、春から対策を始めたいと考えていたのもあり1学期(5か月)の留学期間にしていました。フィンランドの教育を深く学んだおかげで、日本の教育を俯瞰的に見て考えを深めることができ、実際に一度日本の教育現場に出てみたいとう気持ちが固まりました。学んだ教育技術や自分なりに考えたことを、実際に日本の教育現場でも活かすことができるのか知りたいと思っています。
これから留学をする皆さんに向けて、
金銭面、語学力、卒業の遅れなど、たくさんの不安はあると思います。しかし、数々の留学生に出会ってきた中で、留学をしたこと後悔している人には出会いませんでした。
どんな過ごし方であれ、自分が納得できる生活を送ることが一番です。充実した留学生活になることを願っています!