オール金沢大学で「未来知」により社会に貢献する
このたび,金沢大学第12代学長を拝命いたしました。本学は,金沢大学憲章において「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を基本理念に掲げています。「学生や教職員が誇りと愛着を持ち,人が輝く金沢大学」として,一層の発展を成し遂げられるよう,熱意と不撓不屈の一心にて取り組む覚悟です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
世界中が急激に変化する中,金沢大学は希望ある社会に向けて,人類の英知を融合した「総合知」により現代の課題解決を先導するとともに,未来の課題を探求し克服する知恵である「未来知」を創造し,国際社会の中核的リーダーとなる「金沢大学ブランド」人材を育成することにより,貢献していきたいと思います。
現代は,AI,ロボット技術の進展,デジタルトランスフォーメーション(DX)による産業構造の変化が加速しています。日本でも仮想空間と現実を融合した「超スマート社会Society5.0」の実現による経済発展と社会課題解決の未来図が描かれています。一方,人間活動に伴い引き起こされる地球規模の諸問題に対しSDGsが提唱され,人類社会の「持続可能な開発」に向けた様々な取り組みが国際社会全体で行われています。今後,国立大学法人である金沢大学は,社会からの要請に対して公共性を重んじ,これまで以上に重要な役割を果たす責務があります。
金沢大学は,1862(文久2)年に創設された加賀藩彦三種痘所を源流とし,旧制第四高等学校,石川師範学校,石川青年師範学校,金沢高等師範学校,金沢医科大学,金沢工業専門学校などの前身校の歴史と伝統を受け継ぐ総合大学です。豊かな伝統文化が醸成された学都金沢の恵まれた環境に位置します。160年という長い歴史の中で,わが国の高等教育と学術研究の興隆に貢献し,日本海側を代表する基幹的大学へと発展してきました。現在に至るまで,教育,研究およびそれらを基にした社会貢献により地域と世界に資するべく,不断の改革を続けています。
教育面では2008(平成20)年4月,従来の学部学科制から学域学類制へと移行し,次代に必須の先進的で柔軟な学びを実現しました。2016(平成28)年には,学士課程や大学院課程において育成する人材像を「金沢大学<グローバル>スタンダード(KUGS)」として示し,その修得のため,分野融合型のリベラルアーツ教育やSTEAM教育を加速させています。また,2021(令和3)年4月には,Society 5.0に対応した文理融合教育の拠点として,新たな学域となる「融合学域」を創設し,先導学類をスタートさせました。2022(令和4)年4月には,同学域に地域の特性を活かした観光デザイン学類を新設し,4学域・19学類へと学びをさらに深化させます。
今後は,幅広い教養を身につけながら専門性をさらに高められるよう,学生自身が「自ら学び自ら育む」ことができる教育環境の構築を進めていきます。
研究面では,世界トップレベルのナノ生命科学研究所をはじめとするフラッグシップ研究所群による世界的研究拠点の形成と機能強化を促進し,今後人類が直面するグローバルな課題や未踏の領域へと果敢に挑戦していきます。
さらに,本学の広大なキャンパスを活用して,産学官金連携によるオープンイノベーションと研究成果の社会実装を推進し,社会共創による新たな価値の創出を加速したいと考えています。
これらを実現するため,組織運営を効率化するとともに,教育と研究を一体的に捉えた機能強化を行い,大学改革と人材育成の「金沢モデル」を確立します。
そして様々な個性を持つ学生・教職員が,学修・研究・業務に際して,志高く自らの能力を最大限に発揮できるよう,ダイバーシティ環境を整備します。
金沢大学は,その間断ない取り組みにより,人・知・社会との好循環をなす国際的イノベーションハブとなり社会的インパクトを生み出します。地域社会と世界の発展に貢献し,活気にあふれた「地域に愛され,世界に輝く金沢大学」であり続けるため,教職員力を合わせて,オール金沢大学で邁進してまいります。