本学医薬保健研究域医学系の多久和陽教授と岡本安雄准教授らの研究グループは,動物実験において,この新しい作用の仕組みで動脈硬化※1の進行を食い止める強力な治療薬を発見し,医学雑誌Journal of Clinical Investigationの電子版(10月18日)に掲載されました。
※1 老化にともない,血管の壁の内層にコレステロールが沈着して徐々に血管内腔の狭窄をひきおこし,ついには心臓や脳などの重要な臓器の血流途絶をきたして,心筋梗塞や脳梗塞を発症する病気。これを原因とする心筋梗塞や脳梗塞による死亡者は年間総死亡者の1/3 を占め,癌による死亡者数にほぼ匹敵する。死亡に至らなくとも,血管狭窄による血流不足による狭心症や下肢の壊疽などの病気に苦しむ患者が数多くいる。
この治療薬は動物実験で強力な効果が確認された段階です。今後,副作用の有無を調査し,その後,ヒトにおける効果を確認する臨床試験に進んでいく必要があります。従来の動脈硬化の中心的な治療薬とは全く異なる作用機序に基づく薬物であり,コレステロール低下薬との併用により,従来の治療では十分な効果がえられなかった患者に対しても有効性を示すと期待されます。