2月18日,サテライト・プラザにて,ミニ講演「海女の町,輪島市海士町の言語と文化」を実施しました。人間社会研究域歴史言語文化学系の新田哲夫教授の最終記念講演でもある今回のミニ講演には,対面およびオンライン受講者合わせて約85名が受講しました。
はじめに,新田教授は,国の無形民俗文化財に指定されている海女の伝統的素潜り漁に触れ,海女漁が今でも絶えることなく伝承されている背景に,輪島とその沖合約50kmにある舳倉島を行き来する「季節移住」という独特の生活形態があったことを挙げるとともに,海士町の人々が元来輪島の土着の人ではなく,古くから素潜り漁の高い技術をもった漂海の民として移り住んできたといういわれがあることにも言及しました。
また,海士町の方言,音韻,語法,語彙には周りにない特徴があり,福岡県宗像市鐘崎の方言と共通している言葉を数例挙げ,それらを比較検討しながら,言語の面からも海士町のルーツが鐘崎であることを強く示唆している証拠を示しました。
最後に新田教授は,調査対象地区の自治会および調査対象者へ謝辞を表しました。また,当講演が新田教授にとって最終記念講演でもあり,教員生活におけるこれまでの感謝を述べ,盛大な拍手で締めくくられました。
受講生からは「自分のルーツについて考えることで,父や祖父母のことを思い出した」「言語学ミステリーのような構成で非常に興味深かった」といった感想があり,海士町の人々の移住と言語の関係について知る良い機会となりました。
講師:人間社会研究域歴史言語文化学系 教授 新田 哲夫
金沢大学公開講座・ミニ講演