細胞シートが剥がれる力学的な仕組みを解明 -細胞培養基材のデザインへの応用に期待-

掲載日:2023-6-19
研究

 

 慶應義塾大学理工学部の山下忠紘専任講師,金沢大学ナノ生命科学研究所の奥田覚准教授,慶應義塾大学理工学部の須藤亮教授,デュッセルドルフ大学のフィリップ・コールマンズバーガー教授らの共同研究グループは,細胞集団の運動を記述する独自の力学モデルを開発し,細胞集団が立体的な培養面から剥がれ,大規模な変形を引き起こす仕組みを解明しました。

 今回新しく開発したシミュレーション技術は,細胞が発する力や,細胞と足場素材の接着強度といった力学的パラメータをもとに,細胞集団が立体的な構造体の上で起こす複雑な変形・破断現象を予測します。研究グループは,マイクロ構造体の上で培養された細胞の形態と,シミュレーションが描き出す細胞集団の形態を詳細に比較・解析しました。そして,多数の細胞が発する牽引力が一部に集中することで,細胞と足場の接着が破断し,それを起点として細胞集団の大規模な変形現象が引き起こされることを明らかにしました。

 本シミュレーション技術を利用することで,さまざまな形状を持つ立体的な足場の上で,細胞集団が形作る組織の形態を定量的に予測できるようになります。再生医療や組織工学の分野で,細胞培養基材を設計するための有用なツールとなることが期待されます。

 本研究成果は2023年59日に国際科学誌『Acta Biomaterialia』でオンライン掲載されました。

 

 

図:研究グループが独自に開発した粒子ベース力学モデル

 

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Acta Biomaterialia

研究者情報:奥田 覚

 

 

 

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