金沢大学の森下知晃教授は,秋田大学の板野敬太助教・国立極地研究所・東京大学との共同研究において,大陸地殻成長の原動力となる苦鉄質マグマ活動が1000万年間にも及ぶことを示す証拠を発見しました。
本成果は,角閃石カンラン岩中ジルコンの高精度年代・同位体局所分析の結果に基づく苦鉄質マグマの活動期間の初めての直接的な制約であり,大陸地殻の形成過程の解明につながる重要な知見と言えます。
【発表のポイント】
- 大陸地殻(※1)の成長を駆動するマグマ活動の寿命は、大陸地殻の中部〜浅部を構成する岩石から得られた年代情報に基づき推定されてきた。しかし,大陸地殻深部で起きる苦鉄質マグマ(※2)の供給・貯蔵のタイムスケールは直接的に制約されてこなかった。
- 我々のグループは、石川県白山市に産する角閃石カンラン岩中のジルコンの高精度ウラン-鉛年代測定(※3)、酸素–ハフニウム同位体分析(※4)を行うことで,大陸下部地殻への苦鉄質マグマの供給が1000万年間も保持されていた新たな物的証拠を発見した。
- 地球史を通して大陸地殻の成長は間欠的に起きていたことが知られているが,苦鉄質マグマの供給タイムスケールは間欠的な地殻成長パルスのタイムスケールの支配要因の1つであることが示唆された。
なお本成果は,2023 年 10月11日,科学誌『Geology』に掲載されました。
図:研究に用いたジルコンと沈み込み帯における大陸地殻形成の模式図
【用語解説】
※1:大陸地殻
核・マントル・地殻で構成される固体地球の最外殻に該当し,化学組成や構成鉱物の異なる層構造を持つ。
※2:苦鉄質マグマ
マントルを起源とする鉄やマグネシウムに富むマグマで,固体地球内部の熱や物質輸送の役割を担う。
※3:高精度ウラン-鉛年代測定
地質学などの分野で広く使用される,ウランとウランの壊変により形成される鉛の同位体比を利用して,岩石や鉱物の年代を決定するための技術の一つである。
※4:酸素–ハフニウム同位体分析
鉱物内に記録された酸素やハフニウムの同位体からマグマの起源物質や形成過程を解明する化学分析技術の一つである。
ジャーナル名:Geology
研究者情報:森下 知晃