言語をつかさどる脳領域が移動する法則を明らかに

掲載日:2024-10-29
研究 SDGs
  • 3. すべての人に健康と福祉を

 金沢大学医薬保健研究域医学系の中田光俊教授,医薬保健研究域保健学系の中嶋理帆助教,順天堂大学医学部生理学第一講座の小西清貴教授らの共同研究グループは,後方言語野の機能シフトの特徴を明らかにしました。

 脳には,機能領域に病変が及んだとき,自らの機能を守るため,脳機能が本来の機能局在から別の場所に移動することがあります(機能シフト)。しかし,ヒトの脳において機能シフトがどのような法則で起こるのかは明らかになっていません。本研究グループは,ヒトが持つ特有の機能である言語機能(※1)に着目し,覚醒下手術(※2)所見および安静時機能的 MRI(※3)という手法を用いて,言語の機能シフトの特徴を調べました。その結果,病変が本来の言語領域に進展すると言語領域は後方に広がること,そしてその広がった領域は脳機能のハブ(※4)であることが明らかになりました。これは,言語領域が病変に侵されると,脳機能のハブ領域が言語機能の代償をすることを示しています。

 本研究で発見した機能シフトの特徴は,脳科学の世界において未だ解明されていないヒト高次脳機能の可塑性の解明に極めて重要な知見であり,今後の脳研究に大きな影響を与えることが期待されます。

 本研究成果は,2024 年 8 月 1 日 9 時(米国東海岸標準時間)に国際学術誌『Human Brain Mapping』のオンライン版に掲載されました。

 

本研究のまとめ

【用語解説】

※1:言語機能
 ヒトの言語機能は話す,聞く,書く,読む機能で構成される。本研究では話す機能について調べた。

※2:覚醒下手術
 覚醒下手術とは,脳内病変に対して行われる手術の手法である。手術中に患者さんを覚醒させ,ヒトが生きていく上で重要な機能である運動,感覚,言語などを調べながら行う手術のことである。この手術により,脳機能を障害することなく病変を確実に摘出
することができる。

※3:安静時機能的 MRI
 刺激や課題のない状態で脳活動を測定する。測定された信号の変動から,離れた脳領域間の神経活動の相関,すなわち,機能的な結合程度を推測することができる。

※4:ハブ
 ネットワークの中心的役割を果たす領域をハブという。ハブは周辺の複数の領域と多くつながっているネットワーク拠点である。

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Human Brain Mapping

研究者情報:中田 光俊

 

 

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