理工研究域自然システム学系のロバート・ジェンキンズ助教は,上越教育大学の天野和孝副学長とともに,約6,000 万年前の地層である北海道十勝郡浦幌(うらほろ)町の新生代暁新世(ぎょうしんせい)(※1)の活平(かつひら)層上部から,恐竜などが絶滅した約6,600 万年前の地球規模の環境変動(※2)を生き延びた二枚貝類と世界最古のミジンソデガイ属を発見しました。
発見したのは,11種の原始的な深海性二枚貝化石です。そのうち,2属(※3)と2種(※3)の二枚貝(図1)は,1億4,500万年前から6,600万年前の時代である中生代白亜紀の地層からも見つかっています。よって,それら2属と2種の二枚貝は,恐竜などが絶滅した約6,600万年前の地球規模の環境変動を生き延びた種や属と考えられ,その環境変動が深海域の生物に大きな影響を与えていなかった証拠の一つといえます。
また,11 種の中には1新属,3新種(図2)も含まれ,そのうちの1新種ウラホロミジンソデガイ(学名チンダリア・パレオセニカ)は,ミジンソデガイ属としては世界最古の記録であることが分かりました。これまでミジンソデガイ属は,2,800万年前以降のものしか見つかっておらず,今回の発見は,従来の記録を3,000万年以上さかのぼることとなります。
本研究成果の一部は,日本古生物学会166 回例会で発表され,また,論文はイギリスの雑誌Journal of Conchology(2017年1月出版,42巻5号)に掲載されました。
図 1. 発見された恐竜絶滅時の環境変動を生き延びた二枚貝類(写真:上越教育大提供)
左上:ホッカイドウキララガイ
右上:エゾロウバイガイ属の1 種
左下:ムカシスミゾメソデガイ属の1 種
右下:サハリントメソデガイ
左上:ウラホロハトムギソデガイ
右上:ウラホロオオロウバイガイ(*)
下:ウラホロミジンソデガイ【世界最古のミジンソデガイ属】
*新属 オオロウバイガイ属の模式種
【用語解説】
※1 新生代暁新世:
約6,600 万年前から約5,600 万年前の時代を指します。新生代は,中生代の次の大きな時代で,古い方から順に暁新世,始新世,漸新世,中新世,鮮新世,更新世,完新世に分けられます。現代は,新生代の一番新しい時代である完新世です。
※2 約6,600 万年前の地球規模の環境変動:
中生代白亜紀末に恐竜などの多くの生物が絶滅した原因とされている環境変動のことです。この環境変動は,巨大隕石の衝突で引き起こされたことが,現在最も有力視されています。
※3 属,種:
「属」や「種」は,生物の分類階級の一つ。生物学の世界では,通常は大きいくくりから順に「門,綱,目,科,属,種」に細分されます。「属」は「種」の一つ上のカテゴリになります。