金沢大学人間社会研究域人間科学系の森雅秀教授は,日本を代表する哲学者である西田幾多郎の未公開資料が大規模に発見されたことを受けて石川県西田幾多郎記念哲学館(以下,哲学館)が立ち上げた研究資料化プロジェクトにおいて,京都大学大学院文学研究科の林晋教授とともに修復・翻刻事業を進め,その内容を明らかにしました。
2015年秋,西田幾多郎の遺族宅にて50冊のノートを含む西田の直筆資料が発見され,石川県かほく市が運営する哲学館へ寄託されました。これは,西田の直弟子たちによる西田全集の編纂(第二版,1965年)以降の50年で最大規模の発見です。
資料は経年の劣化のため,湿気を含むなど保全のための作業が必要な状態であったため,哲学館において,奈良文化財研究所の協力を経て真空凍結乾燥処理,専門業者に委託して展開,クリーニング等の修復を行った後,翻刻作業を行い,その内容を少しずつ明らかにしてきました。
今回の発見は,京都大学赴任直後の講義ノートを含み,『善の研究』から西田がどのように思想を展開したかを解明する有力な手掛かりとなる可能性があります。