金沢市の高校で捉えた放射線バーストで雷発生の瞬間に迫る

掲載日:2019-6-26
研究

金沢大学理工研究域数物科学系の米德大輔教授と,東京大学大学院理学系研究科の和田有希 大学院生/理化学研究所研修生,京都大学白眉センターの榎戸輝揚特定准教授らの共同研究グループは,冬の雷活動によって発生した2種類の放射線バーストを,石川県金沢市の複数の高校で同時観測することに成功し,雷発生の前兆現象となった可能性を示しました。

本共同研究グループは,日本海沿岸部で発生する特徴的な冬の雷に注目して放射線や電波帯での雷観測を行っており,2017年には雷放電によって大気中で原子核反応(※1)が起きる現象を解明しています。

本研究では2018年1月10日に,石川県金沢市の上空を通過中の雷雲から1分間ほど発せられる微弱な「ロングバースト」(※2)と呼ばれる放射線バーストを観測しました。さらに,そのロングバーストを観測している途中に雷放電が発生してロングバーストが消失し,続いて原子核反応に由来する1秒未満の短く明るい「ショートバースト」(※3)を観測しました。この継続時間の異なる2種類の放射線バーストの関係は未解明でしたが,今回の観測ではロングバーストが消失したと同時に,ショートバーストと雷放電が発生しており,ロングバーストがショートバーストや雷放電そのものの発生を促進した可能性を指摘しました。

雷は世界各地で頻発しますが,放電がどのようなきっかけで始まるのか,その明確な答えは明らかになっていません。本研究は雷の大きな謎を解明するマイルストーンになるといえます。

本研究成果は,2019年6月25日(英国時間)に国際科学誌『Communications Physics』のオンライン版に掲載されました。


 

図. 一連の現象の模式図

雷放電が発生する前に雷雲からロングバーストが発せられ(左),雷放電によってロングバーストが途絶,同時にショートバーストが発生した(右)。Illustration:Hayanon Science Manga Studio

 

 

【用語解説】
※1 原子核反応
原子核そのものを変化させる反応。

※2 ロングバースト
雷雲から放出され,数十秒から数分ほど観測される放射線のバースト。雷雲の中に存在する強い電圧によって電子を光速近くまで加速し,放射線(X線・ガンマ線)を放出する現象。

※3 ショートバースト
雷放電と同期して発生する1秒未満の短い放射線バースト。原子核反応によって叩き出された中性子が大気中の窒素などの原子核に吸着されたときに放出するガンマ線で構成される。

 

詳しくはこちら

Communications Physics

研究者情報:米德 大輔

 

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