令和3年度文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞

掲載日:2021-4-6
研究

令和3年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を本学の教員2名が受賞しました。

 

<科学技術賞 開発部門>
 わが国の社会経済,国民生活の発展向上等に寄与し,実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った者を表彰

中尾 眞二  名誉教授(現:日本赤十字社石川県赤十字血液センター・所長)

[績名] 高感度フローサイトメトリーによるPNH 型血球検出法の開発

特発性再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの骨髄不全症は,主に形態によって診断される曖昧な症候群であるため,病態を判定することが困難でした。
 本開発では,GPI アンカー膜蛋白に特異的に結合する蛍光標識エロリジンと,各血球系統に特異的な蛍光標識抗体を組み合わせ,デジタル波形処理が可能なフローサイトメーターで慎重に解析することにより,骨髄不全症の免疫病態マーカーである発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)形質の血球(PNH 型血球)を高感度に検出するフローサイトメトリー法を確立しました。
 本開発により,顆粒球で0.003% 以上,赤血球で0.005% 以上のPNH 型血球が検出された骨髄不全例を「PNH 型血球が陽性である」と正確に判断することができるにようになりました。その結果,ある患者の再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の発症に,免疫学的機序が関与していることを判定できるようになりました。
 本成果は,従来は無治療経過観察や抗白血病療法などの不適切な管理が行われてきた骨髄不全症患者が,早期に免疫抑制療法を受けられるようになったという点で,血液内科診療に寄与しています。

<科学技術賞 研究部門>
 わが国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った者を表彰

新井 豊子  理工研究域数物科学系・教授    

[績名] 原子間相互作用力計測法の開拓と固体表面上のナノ水膜の研究

私たちを取り囲む有限湿度の大気環境では,多くの固体表面に水が吸着しています。この水膜によって固体表面の反応は促進されたり失活されたりするが,その機構は科学的に未解明な点が多いです。
 本研究では,大気中で駆動する周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用い,数ナノメータ厚の水膜(“ナノ水膜”と命名)が吸着した固体界面を試料として大気中でその構造や反応を原子レベルの分解能で観察・解析しました。この大気中での研究は,超高真空FM-AFM を用いた原子レベルの力学的分光法の開拓や,高感度力学的エネルギー散逸計測による試料原子の面内変位の実証など,原子間相互作用力計測法の開拓が基礎になっています。
 本研究により,ナノ水膜は、固体との界面層で水分子が固体的に構造化し,水(液体)バルク中に比べて水分子やイオンの移動が制限される「準液体性」であることを見いだし,また,ナノ水膜中でのみ発現する力学的触媒作用を発見しました。
 本成果は,従来,腐食の原因として邪魔者と考えられていたナノ水膜の特異性を活かし,原子レベルの液中反応を誘起してナノ構造を創成するなど,資源利用効率の向上を通じて社会の持続可能性向上に寄与することが期待されます。

 

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