発達障害の脳の仕組みを解明へ
吉村 優子 准教授
◆所 属:人間社会研究域学校教育系
◆専 門:特別支援教育,認知神経科学
自閉症の脳の機能の特徴や言語,社会性の発達との関係性について
発達障害は生まれつき脳の発達が通常と異なることで生じると言われています。その中でも,言語やコミュニケーションに困難を抱えることが多い自閉症について,子どものこころの発達研究センターと共同で,その背景にある脳のはたらきを見える化する研究に取り組んでいます。脳磁計(magnetoencephalography;MEG)を使用して,人の声や音に対する脳活動を記録し,自閉症の症状や認知の発達との関係を調べています。
自閉症スペクトラム障害の言語処理に脳の特定領域へのセロトニンの関与が判明
自閉症スペクトラム障害の諸症状と,脳のはたらきをコントロールしている神経伝達物質であるセロトニンの機能不全について報告はありましたが,社会的な声の処理や言語能力との関連については明らかにされていませんでした。そこで,成人の自閉症の方に,社会的な音声の処理能力を調べるため,2種類の「ね」という音声刺激を聞いてもらい,その間の脳活動をMEGによって測定しました。脳内のセロトニンの増減と社会的な音声処理に関わる脳活動,言語能力の関係を分析した結果,人の声の処理や言語能力には、脳の特定の部位のセロトニンシステムが関与していることが明らかとなりました。
さまざまな人が生きやすい社会へ
一人ひとり異なる脳のはたらきや脳の発達過程の違いを明らかにすることで,発達障害の適切な理解や支援法を提案し,さまざまな人が生きやすい社会の実現に寄与したいと考えています。