金沢大学未来ビジョン『志』

金沢大学未来ビジョン『志』Version UP 2024

 令和6年の1月1日に発生した令和6年能登半島地震により、能登半島を中心に、各地で甚大な被害が生じました。被災された全ての皆様に、心よりお見舞い申し上げます。今なお、元の生活には程遠い状況であり、一日も早い復旧・復興・再建に向け我々も尽力してまいります。

 発災直後から、金沢大学が持つあらゆる力を結集し、初期の災害対応に取り組んでまいりました。また、1月末には「能登里山里海未来創造センター」を設置し、中長期的な復興を視野に入れ、震災復興に当たる体制を構築しました。「オール金沢大学で『未来知』により社会に貢献する」という揺るぎない理念並びに「志」の下、「未来知」を結集し、能登で新しい価値を創造し、未来の社会の姿を示すことに加え、その姿を世界へ発信します。これらを通じて、アカデミアとして震災復興に尽力し続けます。

 

金沢大学未来ビジョン「志」の策定

 金沢大学は、1862(文久2)年に創設された加賀藩彦三種痘所を源流とし、旧制第四高等学校、石川師範学校、石川青年師範学校、金沢高等師範学校、金沢医科大学、金沢工業専門学校などの前身校の歴史と伝統を受け継ぐ総合大学です。

 私が令和44月に金沢大学長を拝命した後、諸先輩が築き上げてきた歴史を礎に、金沢大学憲章に掲げる「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」という基本理念に立脚して、金沢大学の揺るぎない未来ビジョン『志』を策定し、同年5月に学内及び社会に示しました。

 金沢大学が目指すビジョン『志』は、地域と世界の2つの視点を互いに往還させながら、現在の課題を解決するとともに、未来の課題を探求し克服する知恵「未来知」により社会貢献を果たすことです。

 『志』として掲げる未来知による社会貢献に向け、研究、教育、経営のあるべき姿を掲げます。具体的には、研究面では「独創的な世界トップレベルの研究展開による世界的研究拠点群の拡充」、教育面では「国際社会の中核的リーダーたる“金沢大学ブランド人材”の輩出」、経営面では「人・知・社会の好循環を作り出す持続可能で自律的な運営・経営の実現」です。

 これら3つのあるべき姿は、互いに密接に関連します。研究と教育が互いに好影響をもたらすポジティブループを形づくり、同時に確固たる経営・マネジメントがその基盤を支えます。3つの機能を一体とし、『志』として掲げる未来知により社会に貢献する、これが金沢大学の目指すビジョンです。

 基本理念のもと、揺るぎない未来ビジョン『志』を明確にし、研究、教育、経営それぞれのあるべき姿を掲げました。そのビジョンに向け、“いま”金沢大学が何を為すべきかというミッションと、“いま”金沢大学が何を行うのかという個々のアクションプランを掲げました。

 

金沢大学未来ビジョン「志」の策定後の取組と「志」の改訂

 「金沢大学未来ビジョン『志』」を公表してから約2年が経ち、取り組みを振り返るとともに、次代を見据えた、未来ビジョン「志」の改訂をすることにしました。これまでも、未来ビジョン「志」の実現に向けて、学生、教職員がそれぞれの立場を超え、互いの尊重と協働のもと「オール金沢大学」で取り組んできました。その努力は、研究、教育、経営ともに実を結んでいます。

 研究面では、統合創成研究環のもと、基礎研究、応用研究、社会実証研究を通じた「未来知による社会貢献」を加速する様々な取り組みを実施しています。令和5年4月に実証研究の中核となる「未来知実証センター」を設置しました。また本学は、予測不可能な時代の社会変革を主導する「文理医融合による非連続的なイノベーションを起こす世界的拠点の形成」を掲げて、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」にも採択されました。さらに令和5年8月から本学が100%出資するベンチャーキャピタル「株式会社ビジョンインキュベイト」も運用を開始しています。グローバルな研究大学として研究力を向上し、社会に実装していくことで、さらなる社会貢献をしていきます。

 教育面では、未来創成教育環のもと、初等教育から大学院まで一貫した教育・支援システムを推進しています。令和5年度「次世代科学技術チャレンジプログラム」(小中高型)に採択され、小中高校生・高専生を対象とした長期的かつシームレスな育成プログラムを提供しています。また、令和6年度からデジタル分野と観光分野の学士課程の入学定員を大幅に拡大しました。令和7年度には融合学域に接続する新たな大学院を設置することが決定しました。志高い学生がより多く大学院進学を決意し、博士課程での研鑚を積むことを大いに期待しています。そのためにも、博士研究人材支援・研究力強化戦略プロジェクト(HaKaSe+)の取り組みも推進していきます。同時に、社会が求める人材を養成できるよう、新たなスキルや知識の獲得、能力の向上を目指す社会人を対象に、分野や目的に応じたリスキリングプログラムも提供しています。

 経営面では、令和4年11月に文部科学省「国立大学経営改革促進事業」に採択されました。これにより、金沢大学が複数の世界的研究拠点を有するグローバルな研究大学というあるべき姿にむけて、人への投資、プロジェクトの推進を強力に進めていく基盤を構築してきました。あわせて、北陸経済連合会のコーディネートのもと、本学を含む北陸地区の4つの国立大学が共同で運営を行う「北陸未来共創フォーラム」を一層充実させます。本組織を通じて、産学官連携によるオープンイノベーションを加速させていきます。

 令和55月には、角間キャンパスにおいて、G7富山・金沢教育大臣会合エクスカーションが行われました。G7各国の大臣、国際機関の代表者が本学を訪れ、学生、生徒、教員と直接対話する大変貴重な機会を実現することができました。これまでコロナ禍の影響を受けていた学生の海外留学や海外からの留学生受け入れも、回復・拡充しています。金沢大学は、世界に目を向けた研究大学として取組を続けています。

 これらの成果は、金沢大学があるべき姿となるための通過点です。今回の改訂では、金沢大学があるべき姿に向けた2年間のタイムラインを示します。構成員一同、同じベクトルで、「オール金沢大学で『未来知』により社会に貢献する」という目標を再確認し、研究大学として教育研究に邁進し、未来の価値創造に貢献し続けます。

 

 

(参考)これまでの大学改革の方針

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