ジャン・ムーラン・リヨン第三大学
2022年度 ヨーロッパ〈フランス〉
T.T.（理工学域フロンティア工学類 4年）
はじめに
私はフランスの南東部に位置するリヨンで交換留学生として10か月滞在しました．理工系学部からのフランス留学は少し珍しいので，この報告書を通じて，学類関係なくすべての学生に留学のチャンスがあることをお伝えできたら嬉しいです．
留学前
私がフランス留学を目指したきっかけは，幼少期に家族と訪れたフランス旅行です．荘厳な建物に囲まれタイムスリップしたような感覚を覚えるとともに，観光地のすぐ隣の通りに佇むホームレスの姿がフランスでの生活の厳しさを物語っていました．そんな華やかさと厳しさの2面性をもつフランスが魅力的に見え，大学に入学してもなおフランスにまた行きたいと感じていました．大学3年生になり，工学部として今後の進路を考えなければいけない時期を迎え，フランス留学という道は夢物語となっていました．しかし夏頃に派遣留学の案内メールを受け取った際，フランスでの長期滞在を経験できるのは今しかないと考え，思い切ってフランスへ留学することを決意しました．
留学生活
リヨンはフランス第2の都市と言われています．中心地はソーヌ川とローヌ川の2本の川に挟まれ，ソーヌ川の右岸には，世界遺産に登録された旧市街が広がり，ケーブルカーに乗ればリヨンを一望できるフルヴィエール大聖堂がそびえ立ちます．ローヌ川の左岸にはショッピングモールをはじめとする商業施設が並び，歴史と都会が共存する街です．外に出て，散歩するだけでも楽しく，特に夜のリヨンは幻想的です．
リヨン第3大学の大きな特徴は，交換留学生であっても現地の学生と同じ授業を自由に履修することができる点です．言語系の授業をはじめ，哲学，文学，歴史なども学ぶことができます．私の中では，日本語学科のサブカルチャーの授業が思い出に残っています．日本の文化がフランス人の視点で語られることによって新たな1面が見え，日本でなぜ漫画やアニメがここまで普及し，世界中に影響を与えているのか，自分なりに答えを持つことができました．当初は，フランス語で行われる授業に圧倒され，自分の力不足を痛感することも多かったですが，授業後に隣のフランス人に「ノート見せて」と話しかけることから始め，次第に仲良くなっていき，2学期を迎える頃にはクラスに何人も仲の良い友人がいる安心感に包まれて授業を受けることができました．
リヨンにはkotopoと呼ばれる言語交流カフェがあります．そこでは毎週水曜日に日本語とフランス語の交流会が開催されており，フランス人の友人を作るにはぴったりの場所です．内向的な性格の私は，はじめは参加することに少し躊躇していましたが，勇気を出して入ってみれば，気さくに話しかけてくれる人ばかりで，私の留学生活の中でかけがえのない友人を作ることができました．
フランスに住むメリットとして，他のヨーロッパ圏の国に簡単に行けることが挙げられます．フランスの大学は2か月に1回，1週間ほどの休暇があり，さらに長期のバカンスもあるため旅行へ行く機会は十分にあります．休みが近づいてきたら，友達と旅行の計画を立て，イタリア，スイス，スペイン，ベルギーなどを訪れました．同じヨーロッパでも建物の造りや街の持つ雰囲気に違いがあり，そんな違いを発見するのも旅行の楽しみでした．もちろん，フランス国内の地域もたくさん訪れました．このような機会はめったにないので時間と体力が許す限り，たくさん旅行することをお勧めします．
フランスでは長期学生ビザを持っていると週約19時間のアルバイトが可能です．私は，リヨンのラーメン屋でアルバイトをしていました．ラーメンを2時間以上かけて食べるお客さんや途中でラーメンを持ち帰るお客さんなど意外な光景を目にし，面白い発見がありました．アルバイトに限らずあらゆる体験が自分自身の貴重な財産になるので，チャンスがあれば思い切って飛び込んでみてください．
最後に
海外という慣れない地での生活に欠かせないのは，苦労を共有できる友人と美味しい食事です．リヨンはそのどちらもが手に入りやすい環境だと言えます．また，日本という国が便利すぎる故にフランスへ来て，不便だと思うことも多いでしょう．しかし不便さからもフランスの文化が伺えます．伝統や歴史を重んじる国だからこそやや保守的な面があり，自己の権利をきちんと主張する国民性や働くことに対する価値観ゆえにデモやストライキが多いのだと感じています．
不便なところも楽しむと，より一層フランスが好きになると思います．
私がフランスという国に魅了され，その文化の虜になったように，これから留学される皆さんがフランスの持つ生き方や価値観を肌で体感し，充実した留学生活を送れることを願っています．
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