マヒドン大学
2023年度 アジア〈タイ〉
S. H.(人間社会学域 国際学類 3年)
はじめに
私は2023年9月から2024年7月末まで、タイのマヒドン大学International College (MUIC)に留学しました。MUICはバンコクから車で1時間ほどのサラヤキャンパスにあります。私は留学前にタイ留学やMUICについての情報を得ることに苦労したので、この報告書が少しでも参考になれば幸いです。
なぜタイ?
私は漠然と東南アジアの文化や発展に興味がありましたが、旅行でも簡単に行けるのではないか、留学のチャンスがあるなら英語圏に行く方がよいのではないかという考えもゼロではありませんでした。しかし、なぜ自分は留学をしたいのか?と考えたときに、やはり私は“東南アジアについて知りたい、現地に住んで自分の目でみたい”という思いが一番強かったため、東南アジアに留学することを決めました。その中でもタイを選んだのは、バンコク中心部の発展した文化と郊外の発展途上の文化が共存した街並みをみることができると思ったからです。
タイの中でもMUICを選んだ理由として、全ての授業が英語で開講されていて履修可能な授業の選択肢が多かったこと、そして自分の興味がある分野の授業が開講されていることが決め手となりました。
留学前
留学前に行ったこととして、①英語スコアの取得 ②ビザ申請 ③ワクチン接種などがあげられます。英語はMUICが要求するスコアを取得する必要があったので、金沢大学の二次募集に応募後もIELTSを受験する必要がありました。最も苦労したのはビザの申請です。派遣先から必要な書類はメールで送られてきましたが、原本が必要だったためタイから送ってもらいました。申請は東京か大阪でする必要がありますが、予約がなかなか取れないので、書類がそろい次第すぐに予約することをおすすめします。東南アジアへの留学ということもあり、様々なワクチン接種も必要でした。1種類で2,3回接種が必要だったので、スケジュールを組んで毎週何かしらのワクチンを受けた記憶があります。
その他、タイ人の友人や金沢大学からタイに留学していた先輩と連絡を取りました。アパートの契約の際にメールの返信がないと困っていると、金沢大学に留学していたタイ人の友達がアパートにLINEで連絡してくれました。タイではメールの返信はなかなか来ませんが、LINEだと早いようです。すぐに返信が来て、その日のうちに契約が完了しました。あまりにもスムーズに進んだのでとても驚きました。留学生にはバディーがついてくれるため、履修登録など大学に関することはバディーによく質問していました。また、金沢大学からタイの他大学に留学した先輩には、持っていくとよいものや現地での生活について教えてもらいました。タイへの留学に関する情報は多くはありませんが、このように出発前から頼ることのできる人がいてとても恵まれていた感じています。
MUICでの学生生活
マヒドン大学International Collegeでは全ての授業が英語で開講されており、さらに留学生は自分の専攻に関係なくどの授業でも取ることができます。毎学期200人以上の留学生が来るマヒドン大学ですが、各授業は約9割が現地の学生です。そのため、現地の学生に交じって授業やグループワークに取り組むことができ、タイの大学生活を満喫することができました。授業が時間通りに始まらなかったり、グループプロジェクトを本番2,3日前になってようやく準備し始めたりと、時間感覚の違いを感じる場面は多くありましたが、私の場合は自分に合っていたので、ストレスに感じることはあまりありませんでした。また、タイの大学は制服があり、普段はそれぞれ好きな着こなしをしています。しかし、テストの時にはバッチ、ベルト、スニーカーなど正しく着こなす必要があり、サンダルでは教室に入れてもらえないほど厳しいチェックがありました。
1年間の留学生活の中でもタイ語の授業に最も力を入れて取り組みました。授業の進度が早く、各授業後の予習復習は必須でした。しかし、少人数で一人一人丁寧に向き合ってくれる先生だったので、モチベーションを保ちながら取り組むことができました。全くタイ語を勉強しないまま渡航しましたが、授業のおかげで今までは未知だったタイ文字を読み書きできるようになったり、日常生活で簡単なタイ語を使って会話ができたりと、英語が通じないことが多いタイではとても役に立ちました。また、タイ語の授業を通して言語面から読み取れる伝統的なタイの習慣や文化、考え方についても知ることができました。現地の言語を学ぶことは、単にコミュニケーションの手段が増えるだけでなく、その国の文化を知ることにもつながると実感しました。
日常とそこから得たもの
タイはマーケットの食べ物が安くほぼ毎日外食のため、友達と気軽にご飯に行くことができ、偶然マーケットで友達に会ってそのまま一緒に食べるということもよくありました。友達と一緒に勉強したり、マーケットでご飯を食べたり、バンコクに遊びに行ったりという当時の日常は、今となっては忘れられない思い出です。留学で得たものは数えきれないほどありますが、一番は様々な背景を持った人に出会い、日常の何気ない会話を通して自分の価値観や考え方が変わったことです。留学生は欧米からの学生がほとんどだったので、タイ以外にも様々なことを知ることができました。日本では当たり前だと思っていたことが当たり前ではないことを知り、自分の価値観がひっくり返ったことが何回もありました。日常会話の中でも文化の違いからWhat?!と突っ込まれたり、逆に突っ込まずにはいられなかったりしたことが度々あったのはいい思い出です。授業からの学びはもちろんですが、友人と時間を共に過ごして得たものはとても大きいように感じています。
旅行
週末や長期休暇にはタイの他地域や近隣諸国へ旅行に行きました。タイには北から南まで様々な民族・文化が存在し、バンコクとは大きく異なる新たなタイの一面を知ることができます。タイと言えばバンコクというイメージだったので、こんなにも違う世界があったのかとタイの魅力に気づかされました。また、近隣の国への旅行では、東南アジア全体に興味がある私にとって、同じ“東南アジア”という地域でも国によって言語、文化などの様々な違いがあるということを肌で感じることができた貴重な体験でした。
おわりに
留学の11ヶ月間は、今までの人生で一番充実していた時間でした。良い思い出もそうではない思い出も今ではすべて貴重な経験です。“東南アジアの文化を知りたい”という漠然とした理由から始まった留学でしたが、新しい環境に一人で飛び込んだことや、様々な価値観をもった人と関わることで新たな気づきを得たことなど、本来の目的以外でも学びを得て、自分の視野が広がったと実感しています。
留学を考えている方へ、自分が選んだ環境で素敵な経験をしてください。