令和3年度 金沢大学学位記・修了証書授与式 学長告辞

掲載日:2022-3-22
学長メッセージ

本日ここに,令和3年度の学位記・修了証書授与式を,通常規模で挙行できますことを,卒業生,修了生諸君と共に喜びたいと思います。晴れてこの日を迎えられたことに,心からお祝いを申し上げます。ご臨席のご家族・保護者の方々には,これまでのご苦労に感謝と敬意を表し,併せてお慶びを申し上げます。

卒業生,修了生諸君は,人間力と専門性を磨き,学士課程にあっては4年間あるいは6年間,大学院課程にあっては修士号,博士号あるいは専門職の学位を得るまでの間,自らの弛まぬ努力と研鑽の積み重ねによってこの日を迎えられたものであり,大いに讃え,改めて祝意を表します。日ごろから諸君を支えてこられたご両親やご家族,周囲の皆さんのお力添えと恩師の導きに,本日は皆さんが改めて感謝する大切な機会でもあります。

さて,コロナ禍に翻弄されて日常生活が制限され,経済活動が停滞して,はや丸2年,卒業生・修了生の誰もが行動制限された環境下での学びを余儀なくされました。それに追い打ちをかけるように,ロシアのウクライナ侵攻により世界経済はさらに混迷を深めつつあります。
 この厳しい状況の中,社会に舟出する皆さんが,これからの長い人生航路を迷うことなく進め,金沢大学の卒業生,修了生として誇りを持って活躍するための心得,未来への道標を3つ申し上げ,餞けとします。

第1は,「将来の大きな夢と希望を描き、しっかりとした人生の到達目標を定め、それに向かって弛まぬ努力を日々重ねる」ことです。
 金沢大学が皆さんに授けることができた専門知識やスキル,そして課題解決能力は,これから皆さんが社会の荒波にもまれ,人生を切り拓いてゆく上で社会人として必要な基礎、専門人材として活躍するための専門基礎力,学問の基本です。
 人生の節目,節目でその到達目標を少しずつ高く,大きくすることで,発展が期待でき,やがては大きな飛躍のチャンスが巡ってくるはずです。願わくば,社会やコミュニティに貢献できる目標,世界の諸課題に立ち向かう大きな目標を掲げ,チャレンジされることを期待します。学ぶこと,学問することは,卒業,修了とともに終わるものでは決してありません。今までに身に付けた基礎力をベースに,学ぶべきはむしろこれからです。これからの皆さんの将来の成否を左右するのは,生涯,学び続ける気構えと継続的な努力です。

第2は、「自分の専門分野を広げ異分野に踏み出し新しいことに果敢に挑戦する社会人を目指す」ことです。
 ご存知のとおり,今,我が国および世界は,人類に立ちはだかる多くの社会的課題に直面しています。同時に,ビッグデータとAI,自動運転など新たな技術革新の波が,皆さんを取り巻く社会構造を急激に変革する大波として押寄せています。
 これからはSDGsやカーボンニュートラルへの配慮のもと,異分野に踏み出す力が求められます!自分の専門分野と視野を徐々に広げ,他の人とは違う,誰にも負けない尖った自分を磨き続けていただきたい。それが,やがては皆さん自身の個性、他の人とは違う個別の強みを築く礎となるはずです。若い君たちには無限の可能性,未来があるのです。自分を磨くために欠かせないことは,何事にも率先して挑戦する気構えです。失敗を恐れてはいけません。失敗こそが何事にも代え難い人生の最大の財産です。高度な専門性に裏打ちされた広い視野と創造力,経験に基礎をおく実践力,それらが皆さんの未来を切り拓いてくれるはずです。人生とは自分を創り夢を実現することです。

そして第3は,グローバルな人材として活躍するために,「人間力,特に社会を変革するイノベーション力を磨き続け,社会の一員、組織の中核を担うリーダーを目指す」ことです。
 人間的な魅力なくしてグループや組織を率いることはできません。十分な教養がないと時には重要な選択,決定を誤る危険性すらあります。世界を舞台に活躍したい諸君も,地域コミュニティに貢献したい諸君も,総合的な人間力とコミュニケーション力を鍛えることが大切です。日本経済の閉塞感を打ち破るため,起業家精神,アントレプレナーシップによって新しい未来を切り拓く人材,社会変革を先導する戦士として皆さんが成長してくれることを大いに期待します!
 特に大学院修了生諸君にあっては,世界の発展を支える中核リーダーとしての役割が期待されています。進歩の激しい科学技術,そして現代社会の劇的な変化を誘発する,変革とイノベーションを先導できる能力,それがこれからのリーダーに求められる中核的な能力です。体力と精神的なタフネスを背景に,変革に適応できる人間力を磨くことが人生を極めるための解決策と私は信じます。

だれもが裕福で幸せな生活を営みたい!と願うのは当然です。しかし,自分や自分の家族だけが良くても,豊かで安らぎのある社会の実現,未来は望めません。世界の平和を導き,守ることが,どれだけ大切かを思い知らされる毎日です。常に人のために何ができるか?自分の住むコミュニティにどんな貢献ができるか?社会のためにどんな役割が果たせるかを価値判断の中心に据え,立派な社会人に成長してほしい。長い人生航路の岐路に立ったとき,その価値観が決断の重要な道標となるはずです。

最後になりますが,皆さんと母校,金沢大学の関係はこれで終わるのではなく,むしろこれから始まるのです。専門分野の社会的,あるいは技術的な課題解決で困ったとき,人生の岐路に立ちその進路に迷ったとき、是非とも母校,恩師を訪ねてください。大学,研究室を介した先輩,同期,後輩とのネットワーク,専門分野ごとの同窓会,そして金沢大学学友会など,大学で温めてこられたネットワークが必ずや役に立つはずです。ご縁,つながりを大切に,育んでください。

結びにあたり、私の信条「心身を鍛え、人間力を磨き、社会に尽くせ!」を餞けとして贈ります。
 諸君が健康で幸せな人生に恵まれ,金沢大学で学んだこと,金沢大学の卒業生,修了生であることに誇りを持ち続け,活躍をしてくれることを祈念し、告辞とします。

令和4年3月22日         

 金沢大学長 山崎 光悦

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