本日、ここに令和4年度学位記・修了証書授与式を挙行できますことを誠によろこばしく思います。特に今回、卒業者、修了者の皆さんに加えて、たくさんのご家族の皆様がご臨席されますことは喜びに堪えません。卒業者、修了者の皆さん、おめでとうございます。研鑽をつみあげ、晴れて本日のよき日を迎えられたことに心よりお祝いを申し上げます。ご臨席のご家族の皆様にも、これまでのご理解とご支援に対して感謝するとともに、心よりお慶びを申し上げます。卒業者、修了者の皆さんは金沢大学で積み重ねた自己鍛錬の日々により、人間力、学識を高めて本日を迎えられました。大いにたたえ、惜しまぬ祝意を表します。また、このたび、晴れて本日を迎えることができたのも、志をともにした友人、ご家族、恩師の温かい励ましのお陰と思います。改めて心に刻み、これまでのお力添えとお導きに感謝する大切な機会でもあります。
現代社会は、気候変動、エネルギー、政治経済、食糧・飢餓、健康、国際平和など地球規模で取り組むべき多くの課題があります。さらに、新型コロナウィルス感染症の拡大により国内外の社会に多大な影響を与えてきました。卒業者、修了者の皆さんは3年間にわたる感染症拡大による様々な制限のもとでも、学びを継続し、完遂させました。本日、学位記あるいは修了証書を手にされましたことに、改めまして心から敬意を表します。皆さんは学びを通して、多くの社会課題の解決には一人一人の叡智を結集すること、大きな理念のもと、持続可能性を考慮した息の長い取り組みが必要であることも実感したと思います。AI、ロボット技術などの第4次産業革命の進展やデジタルトランスフォーメーションによる社会変革も進んでいます。社会構造や価値観が大きく様変わりしている今こそ、金沢大学で学び続けたことは将来のかけがえのない財産、道標になっていくはずです。皆さんが現在、さらに未来の社会を力強く担っていくことを確信しています。これからの日本、世界の新たな社会を築くのは皆さんです。
私は令和4年4月に学長に就任し、翌5月に「金沢大学未来ビジョン 志」を公表しました。この中で、金沢大学憲章に掲げる基本理念に立脚し、オール金沢大学で「未来知」により社会に貢献する、という金沢大学が目指す揺るぎない未来ビジョンを明確にしています。「未来知」とは、現在、ならびに未来の課題を探求し、克服するための知恵です。未来知により未来の価値を創造することにつながります。そのためにも、地域と世界の二つの視点を互いに行き来させることも重要です。さらに、この未来ビジョンの達成に向けては、学生や同窓生、教職員一人一人が金沢大学の宝、財産であり、「オール金沢大学」として邁進することも明記しています。これから皆さんは卒業者、修了者として社会人、あるいは大学院生としての新たな生活が始まります。皆さんはこれからも「オール金沢大学」の重要な一員です。母校で学んだ全てを胸に刻み、金沢大学の卒業者、修了者として、誇りと自信をもって躍動的に目標に向かい、世界で飛躍してください。
皆さんはまさに激動的な変革が起きている社会に新たに船出します。そのために私から3つの言葉を餞としてお贈りしたいと思います。
まず、第一は、「人との出会いを大切にし、人間性を磨いて人として成長する」ことです。
人は人から多くのことを学びます。熱意を持つ人との出会いは重要です。前途に広がる社会・世界において、巡り会う人の「考え方」、「知」、「情熱」に広く触れてください。ぜひ、誠実な関心をもって、さまざまな方とコミュニケーションをとってみてください。そのためにも相手とともに、自分自身にも関心を持つことが重要です。その出会いを通して得た学びを生かし、自分自身の資質や能力を磨き続けてください。生きる姿勢や考え方を見つめることで、必ず得られることがあると信じます。皆さんが人間性を磨き続け、人として成長することを大いに期待します。
第二は、「複合的な視点をもち、全体像を俯瞰して、課題の克服に挑戦し続ける」ことです。 皆さんはこれから正解や模範解答が用意されていない実社会で生涯にわたる新たな学びが始まります。皆さんが学んだ金沢大学は総合大学です。皆さんは総合大学ならではの様々な考え方をもつ学生、教員との出会いがあり、その良さを享受したと思います。今後、皆さんが遭遇する現在、未来の課題は、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大のように、誰もが経験したことがない要素を多く含んでいます。金沢大学未来ビジョン「志」で示している、現在、ならびに未来の課題を探求し、克服する知恵「未来知」が必要となるでしょう。その際、複合的な視点をもって全体像を俯瞰してほしいと思います。そのうえで、失敗をも恐れずに様々な課題の探求と克服に果敢に挑戦してみてください。成功への情熱を持ち続けることです。将来、あるべき姿を明確にし、それに対して何をなすべきか、何を行うか、を考え続けてください。目標の達成には、多面的なアプローチも重要です。皆さんが、複合的な視点をもち、全体像を俯瞰しながら、イノベーションを創出し、国内外の社会の発展に貢献していくことを心より願っています。
第三は、「たゆまぬ自己鍛錬により、生涯にわたり学び続けること」です。 詩人であるサムエル・ウルマンに「青春」の詩があります。このなかで、青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言う。理想を失う時に初めて老いると記されています。希望を胸に、将来の大きな目標にむかって、ぜひたゆまぬ自己鍛錬を行い、理想をもって生涯にわたり学び続けてください。齢を重ねても「未来と自分は変えられる」と私は信じています。
改めまして、卒業者、修了者の皆さん、本日は誠におめでとうございます。社会の一員としての自覚を持ち、今後もぜひ実りある素晴らしい日々を過ごしてください。金沢大学の卒業者、修了者として誇りをもち、国内外の舞台で活躍し、社会に貢献されること、皆さんが生涯にわたり幸せな人生に恵まれることを強く祈念して、告辞とします。
令和5年3月22日
金沢大学長 和田 隆志