2015年1月5日 大会議室
明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願いします。
今年は未年,十干(かん)十二支(し)では「乙未(きのとひつじ)」と言い,「いろいろと抵抗にあい,面倒なことが発生して陰気になりがち,従来の勢力と新しい勢力とが衝突することになる」など,余り良い予見がされない年とされているようです。しかし大学改革を進める金沢大学にあっては,常に現状を見直し,よくない慣習を思い切って拭い去り,軽挙妄動を慎み,状況や形勢を観察しながら落ち着いて自らの行動規範を正していかねばなりません。
昨年年末の衆議院選挙では自民党が圧勝し,アベノミクスを御旗とする長期政権の基盤が築かれましたが,経済的な将来の見通しは必ずしも盤石とはいえません。今年は平成25年度に始まった国立大学の改革加速期間の最終年度を迎えます。昨年後半から議論が加速した第3期中期目標・中期計画期間中の運営費交付金の配分方法の全面的な見直しと,国立大学の3類系化についての危ない議論を,今後も注意深く見守る必要があります。また北陸新幹線の3月開通で,石川,金沢ではその経済効果を期待して涌いていますが,大学は受験者の獲得戦略上,地元での防衛,長野や関東などでの応募者増の両面での募集活動が引続き必要です。
さて昨年4月に学長に就任して以来,9ヶ月が経ちました。就任の際には,運営の基本方針として「教育・研究・診療・社会貢献,そして大学運営のすべての現状を見直し,ビジョンに沿ったスピード感のある改革,チェンジを実行すること」と申し上げました。
大学の教育力,研究力の飛躍的な強化,国際化など機能強化に向け,5月には改革の具体的な方策を,17のビジョンと56の課題,それを解決するための150余の具体的なアクション計画にまとめ,YAMAZAKIプラン2014として公表し,改革と挑戦を旗印に着実に施策を実施に移し,10月にはその進捗度にチェックを入れました。
教育改革にあっては,金沢大学<グローバル>スタンダードKUGSを定めると同時に,国際基幹教育院の設置をはじめ,平成28年度開始予定の共通教育改革における,具体的なGS科目の設定に関する議論を進めました。さらに,改革の基本方針に沿った学域学類制の点検・見直しを開始しました。本年は,金沢大学の特色を打ち出すための,ミッションの再定義を踏まえた学類・コースの改革について,議論の正念場を迎えます。また,昨年の最大の成果の一つは,スーパーグローバル大学創成支援事業SGUに採択されたことです。ステークホルダー,政府,国民に対し,金沢大学の10年後の姿,グローバルキャンパスでグローバル人材を育成する,極めて挑戦的な約束,数値目標を示しました。キーとなるのはなんと言っても教職員の国際化,グローバル化です。また,それらの中にあって学生たちの心身を鍛錬する「人間力強化プログラム」の一環として,「学長と行く能登合宿」を昨年実施しました。この2月にはその第2弾として「五箇山合宿」を計画しています。教職員が一丸となり,先般公表したロケットスタート計画に沿ってその実現に取り組まねばならず,皆様と共に目標に向かって努力していく所存です。附属高等学校におけるスーパーグローバルハイスクール事業SGHへの採択と先進的な取組みも,引き続き大学として支援しなければならない挑戦的な取組みの一つと捉えています。
研究力強化にあっては,研究拠点形成,若手研究者育成の一環として開始した超然・先魁プロジェクトの募集・採択をはじめ,戦略に基づく全研究者の研究グループ形成と教員配置計画の策定,リサーチプロフェッサー制度と年俸制の導入,テニュア・トラック制の普及などによって人事制度改革も推進しました。また異分野融合研究推進のための新学術創成研究機構(仮称)の概算要求を行い,ほぼ採択を確実なものにすると同時に,平成30年度からの新分野融合研究科の新設に向けた準備も開始しました。国際ネットワークの形成支援も重要な課題です。改革のスピードを多少遅らせたとしても,これらの重要な施策の着実な実施を目指していく所存です。
競争的資金の獲得では,昨年,代表的な多くの機関申請事業で新規採択を獲得し,科学研究費補助金の新規採択件数では全国14位につけるなど少しずつながら躍進を続けております。本年も引き続き,URAの皆さんの力を借りながら,外部資金獲得に全教職員が一丸となって挑戦できるよう,取り組んで参ります。
一方,地域・社会貢献にあっては,引き続き地(知)の拠点整備事業COCを中心に地域との連携を深めて参りました。珠洲市との寄附講座による連携事業推進をはじめ,七尾市とも具体的な5つのWGを設置したほか,連携活動を開始しました。さらに年末にはお隣,富山県の南砺市との協定締結にも漕ぎ着けました。今年も石川県や金沢市をはじめ地域自治体等と連携した,教育研究活動,地域貢献活動を推進して参ります。
さらに,ガバナンス改革や男女共同参画の推進,病院の経営健全化も併せて進めて参ります。また,教員,職員のさらなる適正な人員配置を進めて参ります。それは,社会のための大学として,何を優先し,どこを強化すべきかを考え,判断した結果に基づく措置です。5年後,10年後に研究で世界に誇る,光輝く金沢大学の実現を目指し,引き続き皆さまと共に頑張り着実に改革を推進して参ります。
最後に,私が金沢大学の代表であるように,皆さんお一人お一人も本学の代表なのです。あなた方の中の誰かお一人の行動であっても,社会からは金沢大学の行動とみなされ,ときには社会の批判に晒されることもありましょう。銘々が金沢大学を代表している,背負って立っているとの自覚と責任を持って行動していただくよう,改めてお願いいたします。 「皆が頑張る,地域に愛され,世界に輝く金沢大学を創りましょう」
平成27年1月5日
金沢大学長 山崎 光悦