教職員の皆様へ
教育研究評議会所信表明
2014年4月に学長として本学運営の舵取りを開始し,4年間の任期のうち半分が過ぎ,これから後半に差し掛かります。引き続き宜しくお願いいたします。
この2年間を振り返ると,17のビジョン,56のサブジェクト,160余りの具体のアクションプランからなるYAMAZAKIプラン2014に沿って,教育改革,研究力強化,国際化,診療と地域貢献,人事・ガバナンス改革など,全ての項目において,改革は一定の進捗をみております。
教育面では,金沢大学<グローバル>スタンダードKUGSを策定し,それに沿った共通教育改革に向け約30科目のGS科目を定め,そのテキスト開発を進めました。そして国際基幹教育院設置のための定員拠出については各研究域のご協力をいただき,また非常勤特任教授の先生方のご協力も得て4月発足に漕ぎ着けることができました。関係の皆様に心より御礼を申し上げると共に,今後さらなるご苦労をお願いせねばなりません。また大学院教育の高度化では,先進予防医学研究科共同専攻と教職実践研究科の平成28年4月発足に向け準備を進めて参りましたが,関係者のご努力により順調にスタートできる見通しです。また学生達の人間力強化合宿プログラムも準備期間を経て,いよいよ共通教育科目に組込みます。
一方,ミッションの再定義に沿った学域学類制の点検・見直しと改組計画の策定によって,人間社会学域・理工学域の教育組織の改組と一部新学類の設置の議論がほぼ固まり,平成30年度開始予定の文系一括・理系一括入試と併せて一定の方向付けができたのではないかと思います。
機関として申請した競争的資金の獲得では,大学教育改革加速プログラム,AP事業採択によってアクティブラーニング推進の基礎が固まり,図書館ラーニングコモンズの整備も進めることができました。さらには,平成27年度に国立大学改革強化推進事業補助金(総合型)が獲得できたことにより,平成30年度スタート予定のJAISTとの共同大学院「文理融合大学院研究科(仮称)」の設置準備に弾みがつきました。後述の新学術創成研究機構,高等教育部門を中心とする関係者には,5年一貫型の新大学院の発足に向け,案造りのご苦労をお願いしております。
次に研究面では,人事制度改革,ガバナンス改革と連動させることで,大学のダイバーシティである基礎研究分野を大切にしながらも,本学の研究力強化に関する長期ビジョンの基礎固めがある程度できたのではないかと自負しております。
まず研究力強化では超然・先魁プロジェクトを選定し,金沢大学を代表する研究課題として支援を開始しました。また異分野融合による研究力強化のため,国立大学機能強化促進事業費の獲得による新学術創成研究機構の設置と12ユニットへのユニットリーダーや若手PI(Principal Investigator)の配置などにより,新機構を順調に立ち上げることができました。本年度予算では,さらに4ユニットを拡張して,機構の分野融合を促進します。
またリサーチプロフェッサー(RP)制は,年俸制と抱き合わせることで,外部資金獲得者には給与にインセンティブを付与することで対象者を拡大しました。招聘型RPは主に超然プロジェクトの世界展開のために,さらに若手RPはテニュアトラック(TT)制の更なる普及により定年前のポストを前倒し活用することで優れた研究者の採用を促しました。科学研究費補助金をはじめ,CREST・さきがけなど研究外部資金の獲得支援では,FSI機構を構成するURAの皆さんの活躍を金沢大学の誇りとし,感謝申し上げたく思います。
さらに全国共同利用・共同研究拠点化では,新年度からがん進展制御研究所の新たな6年間の継続指定が決まりましたし,環日本海域環境研究センターについても新ビジョンによる再生計画に基づく申請により,新規採択が実現しました。加えて,頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラムの獲得と併わせた研究拠点形成の推進にも努力して参りました。
その一方で,研究力強化に向けた教員配置計画など,項目によっては期待したほどの成果を出せず,まだまだ変革が進まない計画や,効果が出るまでにさらに努力を要する計画が少なくないことも事実です。また先般申請した卓越研究員制度も含め,退職ポストを先取りする若手研究者の採用や国際基幹教育院の専任ポスト拠出では,常々,研究域長を始めとする関係部局長に無理難題をお願いし,多くを実現することができた点では大変感謝申し上げ,随分とご苦労をおかけしたことは反省点でもあります。新年度に向けては,個人別教員業績評価の本格実施をとおして,処遇改善に向けた適切な対応が必要であると認識しております。
3点目の国際化の面では,まずスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)に採択され,SGUロケットスタート計画に基づく数々の事業の推進により,大学の教育,研究,診療,社会貢献のすべてにおける国際化の推進,グローバル人材育成の着実な歩みを進めることができました。さらには国費外国人留学生の優先配置枠の獲得と海外留学支援制度による短期学生派遣・留学生受入れ(旧SS/SV)枠の獲得やトビタテ留学!JAPANプログラムへの応募・採用を支援することで,留学生受入れや学生達の海外派遣を着実に拡大することができました。
一方,国際化を側面から支援する取組として,海外同窓会(中国,インドネシア)の新たな設置やコラボラティブプロフェッサー(CP)制の導入,留学生・学生混住宿舎の整備計画策定,海外拠点の整備なども挙げねばなりません。さらに地域・社会貢献では,COC+事業の採択と若者の地域定着に向けた各種事業の推進や,病院機能の強化と危機管理,臨床研究開発支援体制整備などまだまだ道半ばの課題,事業も少なくありません。
最後に学長のガバナンス力強化に向けた取組では,学内規則の整備,部局長の目標管理制度とヒアリング導入など,改革を粛々と進めて参りました。
さて平成28年度からの第3期中期目標中期計画期間中の概算要求では,金沢大学の10年,20年先を見据えた議論の末,3つの枠組から重点支援3を選択しました。本学が打ち立てた5つの重点戦略,すなわち,1)世界で活躍する「金沢大学ブランド」人材の育成,2)金沢大学が世界に誇る研究拠点の形成,3)徹底した国際化の推進による教育研究力の向上,4)持続的社会の実現に向けた教育研究成果の社会実装,5)積極的なガバナンス改革 という戦略に沿って行った要求ですが,本学を含め16大学が選択した重点支援3の大学にあっては,これまでの一般運営費交付金1.6%がグループ内の競争的資金としてカットされ,戦略・施策に応じて措置されました。本学は機能強化予算分のうち組織整備予算の枠組みでは,国際基幹教育院の設置や新学術創成研究機構の拡充など一定の評価がされました。その一方で,昨今の新聞紙上でセンセーションナルに取り上げられたので目にされた構成員も多いと思いますが,機能強化予算分のうちのプロジェクト予算については,掲げた戦略が世界と伍して戦う鋭さが不十分,主要達成指標の見せ方が不十分であったとの評価のため,16大学中最下位と厳しい結果となり,皆様にも余計な心配をおかけしました。しかしながら,機能強化予算全体では,16大学中10位とそれなりの予算獲得ができたものと考えております。しかし,特にプロジェクト予算では厳しい結果となっており,与えられた予算の範囲内で,本学が目指す戦略と施策を着実に実施して目標を達成し,外部評価を高めていくことが肝心です。
さて残り2年間の行動目標は,平成30年度からの第3期中期目標中期計画の6年後の達成目標を見通して,YAMAZAKIプラン2014を見直し,新YAMAZAKIプラン2016(仮称)を早々に定めるべく,現在作業を急ピッチで進めております。
就任時に述べた私の運営の基本方針,「教育・研究・診療・社会貢献,そして大学運営のすべての現状を見直し,ビジョンに沿ったスピード感のある改革と挑戦を実行すること」を今後も堅持し,世界一流大学を目指し改革と挑戦をし続けて参ります。
教育では,昨年度までの議論を踏まえた人間社会学域・理工学域の教育組織の改組と一部新学類の設置,平成30年度開始予定の文系一括・理系一括入試,JAISTとの共同大学院設置などの諸準備を着実に進めてまいります。一方で,概算要求により獲得できた入試改革経費を活用して特色ある入試方法の開発,制度の実施が課題となります。その他,図書館も含めた学生の学修支援機能の大幅な改革や国際化に向けた着実な取組みも重要です。
研究力強化では,引き続き基礎研究分野の多様性を堅持しながらも,RP制度とTT制の普及などによる研究拠点形成に引き続き努力して参ります。そのための給与システムの改革,IR(Institutional Research)を通じた本学の現状分析とそれに基づく戦略の策定,そのための事務職員の高度化及び高度専門職URAの育成にも努めて参ります。研究力強化に向けた教員人事制度のさらなる改革やサバティカル制度の定着も大切であると捉えています。
また社会貢献では,COC+事業による若者定着目標の達成,病院改革による経営の健全化と臨床研究中核病院を目指す研究開発支援体制整備を着実に加速し,地域と社会から愛される大学に本学を皆様と共に育てて参りますので,どうか宜しくお願いいたします。
これらの計画を相当のスピード感をもって実現してゆきますので,ご協力をお願いしたいと思います。「皆が頑張る,地域に愛され,世界に輝く金沢大学」を一緒に創りましょう。
2016年4月1日
山崎 光悦