難関を突破し,本日,晴れて金沢大学に入学された新入生の皆さん,ご入学おめでとうございます。金沢大学の教職員を代表してお祝いを申し上げますと共に,皆さんを心から歓迎いたします。また,この日を心待ちにされていたご家族の皆さまにも,心よりお祝いを申し上げます。
ただ今,学域,大学院,別科を合わせて2,591名の皆さんの入学許可を宣言しました。皆さんは今日から金沢大学の学生です。本学学生となることができたことに誇りを持ち,これからの大学生活では,金沢大学の一員としての自覚と己の行動に責任を持って学生生活を過ごしていただきたい。勉学に勤しむことは勿論,素晴らしい先生方,友人と出会い,貴重な体験を通して,人間として,専門職業人として,そして未来の研究者として,大きく成長を遂げてくれることを願っています。
金沢大学では,未だ終息の兆しが見えない厳しいコロナ禍の下,対面式,リアルを基本としながらも3密を避けるため一部オンラインを組み込んだハイブリッドでの授業も導入し,皆さんの学修機会の確保と学びの質保証に努めておりますので,安心して,勉学に励んでいただきたい。このパンデミックに起因する世界的な危機は,その一方で,テレワークや遠隔授業をはじめ,DXデジタルトランスフォーメーションによる技術革新の大きな原動力となり,世界を一変させる大きな波となって皆さんの日常生活,学修環境に今,迫りきています。皆さんを取り巻く社会構造がこの技術革新によって大きな変革期を迎えていることに目を向け,未来社会の課題に立ち向かう者として,「大学や大学院で学ぶことの意義は何か?」を改めて自分自身に問いかけてほしい。
私が考えるその答えは,「己を磨く!」に尽きます。
さらに皆さんに問いかけたい。では「何を目的とし,何を達成するために,己を磨くのか?」
このことを各自,常に自問自答し,自分の学ぶ目的,目標を定めてほしい。専門力を磨き,それを活用して大成したい,幸せに暮らすために安定した収入を得たい,世界を舞台に活躍したい,地域コミュニティに貢献したいなど,それぞれの夢の実現に向け,努力されることを大いに期待します。また,それ以上に社会の一員として,やがては社会を牽引する中核リーダーとなって,その持続的な発展と人類の幸福に貢献しなければならないことを,この機会に肝に命じてほしい。一人ひとりがそう自覚することで,理想の未来社会の実現に近づくことができます。
学ぶ目的,目標が定まったら,皆さんに最も期待したいのは,何よりも「死に物狂いで学ぶ」ことです。
「己を磨く!」の方針に沿って,自らの学びの計画を立てるための3つのヒントをこれからお話しします。
第一は「人間としての己を磨く!」ことです。
人文・社会科学,そして自然科学の基礎を幅広く学び,教養を深めることで,高い倫理観と,新しいアイデアを創造する力,それを具現化する実践力など,「人間基礎力」を磨いていただきたい。本学は,「金沢大学ブランド」の人材育成を教育目標に掲げ「金沢大学〈グローバル〉スタンダード KUGS(Kanazawa University Global Standard)」を定めています。GS科目群による学びを通して,将来,社会に出て活躍する上で基盤となる素養として6つの能力,すなわち「自己の立ち位置を知る」「自己を知り,自己を鍛える」「考え・価値観を表現する」「世界とつながる」,そして「未来の課題に取り組み」「新しい社会を生きる」,すなわちSTEAM教育による分野横断的な解決力を全ての学生が備えることを目指しています。
第二は「専門人としての己を磨く!」ことです。
金沢大学は,国が進める国立大学機能強化の3つの枠組みから,「世界卓越型」を選択しています。国際通用性のある人材育成,大学院教育の高度化,国際ネットワークの構築などを通して世界トップレベルの教育研究拠点の形成に向けた取組みを推進しています。学域学類制では専門の基礎を学びながら,経過選択制によって自分の最終的な専門分野・コースや学位プログラムを選択します。自ら作る個々の「学びの計画」に沿って,専門知識を深め,スキルを磨き,そして国内外企業でのインターンシップ,本学の国際ネットワークを活用した海外機関でのラボトレーニングや,起業を目指すアントレプレナーシップなどの機会を自ら積極的につかみ,誰にも負けない自身の個性や強みを見つけ,磨いていただきたい。大学にはそのための学びの自由度があります。
特に大学院課程にあっては,ナノ生命科学研究所をはじめフラグシップ研究所群,研究拠点が生み出す成果を礎に,革新的かつ高度な教育研究を実践しています。大学院生には,困難な研究課題に果敢に挑戦し,グローバルな視野と突破力,イノベーション力を兼ね備えた高度専門人材として成長してくれることを期待します。
そして第三は,「グローバル人材としての己を磨く!」ことです。
社会変革を先導する人材となるためには,自国の文化や歴史を背景に,異文化を理解し,受け入れる寛容性と総合的な人間力を鍛えることが大切です。そのためにも,在学中に少なくとも一度は海外留学に挑戦していただきたい。日本の日常とは全く違う世界を直接,体感することで視野が広がり,目指すべき目標が高まります。国際コミュニケーション力,交渉力,そして高度な専門性に裏打ちされた広い視野と創造力,さらに世界が直面する諸課題を解決に導く実践力,それらが皆さんの未来を切り拓いてくれます。
「未来はやってくるものではなく,自分で切り拓くものです。」決して失敗を恐れてはいけません。挫折を経験することが諸君を精神的に強くしてくれます。
多彩な未知の能力,未来の可能性を秘めた新入生の皆さん,150年以上の歴史と伝統を引継ぐ金沢大学の一員であることの自覚と誇り,己の行動に責任を持って,これからの大学生活を過ごしていただきたい。総合大学である本学の特色を最大限に活かし,分野を越えて大いに学び,さまざまな分野の学友と交わり,人間力形成に専念されることを,そして他の人とは違う,尖った自分を創り磨いてくれることを期待しています。
結びに当たり,諸君が日々の研鑽を積み重ね,切磋琢磨し,教養豊かな未来の専門人,社会変革を先導するイノベータ,あるいは科学技術者として成長されることを祈念し,お祝いのメッセージとします。
令和3年4月2日
金沢大学長 山崎 光悦