令和7年 学長年頭あいさつ

掲載日:2025-1-6
ニュース 学長メッセージ

 皆さん、新年明けましておめでとうございます。新しい乙巳(きのとみ)の年頭にあたり、ごあいさつを申し上げます。乙巳は、成長し、変化もしながら、次の発展につながるとも解釈されております。60年前の1965年は前年に新幹線開通、東京オリンピック開催があり、まさに高度成長期への移行が国民に実感された年でした。本年も、皆さんや本学にとりまして、さらなる成功に向け、光が差し、飛躍的な成長につながることを願っております。

 国際的にも安全保障問題など懸念事項が顕在化しております。ロシアのウクライナ侵攻はまもなく3年に及ぼうとしております。イスラエルとパレスチナの紛争も続いております。米国ではトランプ氏が大統領に返り咲くことになりました。国や地域間だけでなく、それぞれの国内での対立と分断が憂慮されます。AIなどのテクノロジーの急速な進歩の負の側面が民主主義の根幹を揺るがしかねない深刻な事態になっております。地球上のすべての生き物が享受してきた持続可能な地球環境は、今や大きな危機に直面しております。我々はグローバル社会の一員として、自分ならなにができるか、常に問い続け、考えうる解決策を実践し続ける必要があります。そのためにも、多文化を理解する学びと寛容、共生する姿勢が重要です。そのような中で、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞されたことは慶事として記憶に新しいところです。本年が様々な対立や分断を乗り越え、希望と明るさに満ち溢れた安寧の年になることを心より祈っております。

 昨年は、能登半島では、年初の大きな地震、さらに復旧・復興への歩みを進める中で9月に豪雨災害に直面しました。いまだ、被災された方々は平穏な日常には程遠い状況です。本当に言葉が見つかりません。被災された全ての方々に心よりお見舞いを申し上げます。発災後、1年となる令和711日に輪島市で催された令和6年能登半島地震・令和6年奥能登豪雨犠牲者追悼式に参加をいたしました。一日も早く被災された方々が元の生活に戻られ、被災地が復興・再建を遂げることをご祈念申し上げます。

 本学では、地震発生から1時間後に災害対策本部を立ち上げ、学生、教職員の安否確認や施設の安全確認を行いました。1月4日から遠隔にて授業を実施するなど、大学としての教育研究機能の迅速な回復に努めて参りました。余震が続く中で、大学入学共通テストは追試も含めて滞りなく実施することができました。また、本学附属病院を中心に医療支援にも尽力してまいりました。皆さんのご理解、ご支援、ご協力に改めまして心より御礼を申し上げます。能登半島にある本学の施設では、いまなお十分な安全確保ができないため使用できないものもあります。この震災からの復旧・復興・再建に向け、本学は「地震・災害に強く安全・安心で、だれもが住みよい、文化薫る地域・まちづくりとひとづくり」という理念を掲げました。能登が有している本質的な価値を守りながら、そこに新たな価値を付加していきたいと考えております。まさに不易流行です。この理念のもと設置された「能登里山里海未来創造センター」が活発に活動しております。今後も、雲外蒼天を信じ、アカデミアとして能登地域の復旧・復興・再建に尽力いたします。

 金沢大学は、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」という基本理念に立脚しております。この基本理念のもと、金沢大学未来ビジョン「志」を昨年9月にversion upを致しました。このなかで、揺るぎない未来ビジョンである「オール金沢大学で『未来知』により社会に貢献する」ことを改めて明確に記しました。皆さんと対話、協調しながら金沢大学の一層の発展にむけて様々な取り組みを推進しております。良いチーム作りも進んできているように思います。皆さんのご理解とご協力に深く感謝を致します。

 この未来ビジョン「志」において、研究力強化として世界的研究拠点群の拡充を掲げております。金沢大学は改めて申すまでもなく研究大学です。統合創成研究環のもと、基礎研究を極め、文理医の異分野融合研究を推進し、未来知による新たな価値の創出を目指しております。202312月に採択されたJ-PEAKSが本格的に動き始めております。予測不可能な時代の社会変革を主導する文理医融合の世界的研究拠点の形成と発展を10年後のビジョンにしております。価値の軸を変えることにより、これまでの延長上にはないイノベーションを起こしたいと考えます。同時期に北陸地域のスタートアップ創出プラットフォーム「TeSH」も採択されました。ベンチャーキャピタル、「ビジョンインキュベイト」も活発に活動しております。この流れのもと、すでに新たな研究拠点群の方向性も見えてきております。実証研究を推進するエンジン、「未来知実証センター棟」も立ち上がります。基礎研究・融合研究の高度化、社会実装の加速化が重要です。金沢大学が目指す北辰ともいうべきあるべき姿は複数の世界的研究拠点を持つ国際的研究大学であることです。この北辰に向け、人への投資、プロジェクトの推進を強力に進めて参ります。併せて、「北陸未来共創フォーラム」も一層充実させ、社会共創も進めて参ります。

 教育においては、未来創成教育環のもと、学士課程および大学院教育を一段と充実させていきます。さらに、5つの附属学校園を有する特長も活かし、大学入学前から研究者として独立するまでの一貫した教育モデルを構築しております。少子化時代にあっても、2024年度より、観光デザイン学類、スマート創成科学類並びに電子情報通信学類の定員増が認められました。融合学域では、先導学類からはじめて卒業生を送り出します。「志」の最重要ミッションの一つでもある大学院改革も進んでおります。HaKaSe+による支援も充実させております。博士の学位取得後に本学でPromising researcherとして研究を継続できる研究者も増えております。本学への志望者がさらに増えるとともに、入学した学生諸君にはぜひ、学ぶこと、研究することのワクワク感、楽しさ、面白さを感じて欲しいと強く願っております。日々学び、人間力を高め、“金沢大学ブランド人材”として大きく飛躍することを楽しみにしております。

 一昨年5月には、本学でG7富山・金沢教育大臣会合のエクスカーションを行いました。附属学校園の児童、生徒、本学の学生、大学院生、留学生諸君と教職員の皆さんとともにお迎えし、大成功となりました。とても得難く、ありがたい機会でした。教育の未来について議論を行い、本学学生から金沢大学ユース宣言も力強く示すことができました。各国の大臣はじめ参加者からも学生、教職員に対する称賛のお言葉を多くいただきました。私自身も大変誇りに感じております。「オール金沢大学」で取り組むことができたことを改めて感謝いたします。本学の学生が志高く、災害後のボランティア、未来デザインプラクティス、雑談のチカラなどに取り組む姿に意を強くしております。

 国際化は本学のさらなる発展における重要な基軸です。昨年11月にはSGUの後継として、大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業に採択されました。グローバルな研究大学として、「国際が日常にある、日常が国際である」ことは基盤です。未来知による社会貢献、すなわち未来の新たな価値を作り出す大学として、グローバルなダイバーシティ環境は重要です。本事業を通じて、国際的な研究の一層の発展や国内外のリーダーたる金沢大学ブランド人材の育成にさらに努めて参ります。

 第4期中期目標期間も中間地点となり、改革と挑戦を加速し、着実に進めております。そのためにも、多様なステークホルダーとも相互理解・信頼を築くことは必須です。さらに、令和7年度政府予算案が昨年末に閣議決定されました。こうした政府からの予算措置に加え、外部資金の獲得強化などによる財政構造改革を継続して行います。それにより、本学の研究力・教育力の一層の向上と筋肉質な経営基盤の確立の両立を目指します。

 新たに迎えた2025年は、一日も早い復興とともに、環境対策、社会・経済活動や科学技術の発展を強く意識した展開になると考えます。今後も学生、留学生、研究者などの国際的な頭脳循環も拡充されるでしょう。発展を遂げるデジタル化やAIを活用し、社会活動や生活様式の変革が一層進むと思われます。本学においても、気持ちを新たに、基本理念に基づく未来ビジョン「志」の達成に邁進していく所存です。世界のイノベーションを金沢大学から起こし、未来を創造していくことを目指します。そのためにも皆さんの力を結集し、「世界に輝く金沢大学」を一人一人の努力で実現することこそが重要だと信じております。私は人こそが財産、宝であるとの信念をもっております。皆さんとともに、金沢大学の飛躍的な発展、国内外の社会への貢献にむけ、引き続き「オール金沢大学」で取り組みます。皆さん、どうぞ本年も宜しくお願いいたします。

令和7年1月6日
金沢大学長 和田 隆志

 

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