金沢大学医薬保健研究域医学系神経解剖学の石井宏史助教,堀修教授,脳脊髄機能制御学(脳神経外科学)の上出智也講師,中田光俊教授,大学院医薬保健学総合研究科医学専攻博士課程の出村宗大さんらの共同研究グループは,くも膜下出血後早期における交感神経系の過活動がもたらす悪影響を明らかにしました。
くも膜下出血の多くは脳動脈瘤の破裂によるものです。発症すると,現在の最善の治療を行ったとしても,3 分の 1 の患者さんは命を落とされます。3 分の 1 の患者さんは元の生活に戻れますが,残りの 3 分の 1 の患者さんは命は助かるものの後遺症が現れます。現在,脳内出血や脳梗塞の予後が改善されつつあるなかで,くも膜下出血においては依然として顕著な改善には至っていません。
くも膜下出血を起こした患者さんの予後が悪い原因として,くも膜下出血は発症時だけではなく,その後の約 2 週間の病態が予後に大きく関わっているからと考えられています。これまでさまざまな研究が行われてきましたが,いまだにそのメカニズムは明らかになっていません。
今回,本研究グループはくも膜下出血発症直後における交感神経系の過活動が神経学的予後に影響していることを明らかにしました。本研究のさらなる発展により,くも膜下出血において神経機能の悪化をもたらすメカニズムの全容を明らかにできるだけでなく,発症した患者さんへの新しい治療につながることで,もしくも膜下出血を発症しても後遺症なく元の生活に戻れる患者さんが多くなることが期待されます。
本研究成果は,2023 年 5 月 8 日に国際学術誌『Stroke』のオンライン版に掲載されました。
図1:本研究の内容
くも膜下出血発症後の急性期における交感神経の過活動が,頚部交感神経節(上頚神経節)を介して,
脳血流障害を引き起こし,予後を悪化させることを明らかにしました。
ジャーナル名:Stroke
研究者情報:堀 修