体節は,脊椎動物の発生過程において体幹部および尾部に一時的に形成される繰り返し構造で,その後の発生において体節の繰り返し性は,脊椎骨や骨格筋の分節性へと引き継がれます。体節の繰り返し構造は,体節の前駆細胞である未分節中胚葉において分子時計(分節時計)により作られる,周期性を持つ時間情報を基にして形成されることが知られていました。その一方で,実際に分節時計の周期性が体節の空間的な繰り返し構造に変換される仕組みについては,不明な点が多く残されていました。
今回,基礎生物学研究所/生命創成探究センターの矢部泰二郎助教,高田慎治教授,金沢大学理工研究域生命理工学系の瓜生耕一郎助教からなる研究チームは,ゼブラフィッシュを用いて,体節形成に必須な因子として知られるRipplyの機能および発現制御機構について詳細な解析を行い,Tbx6,Ripply,Her1/7 および ERK シグナルの4因子から構成される遺伝子発現制御ネットワークを発見しました。この制御ネットワークに基づいて作られた数理シミュレーションにより,ゼブラフィッシュの体節形成をほぼ完全に再現することができたことから,ゼブラフィッシュの体節形成おいて,時間的な周期性というアナログ情報を,体節の繰り返し構造というデジタルな形態に変換するための分子機構の同定に成功したと考えられます。
本研究成果は,英国科学雑誌 『Nature Communications』 に 2023 年 4 月 13 日付で掲載されました。
ジャーナル名:Nature Communications
研究者情報:瓜生 耕一郎