グリーンランド氷床南東部高地の夏季融解量の増加を復元
~グリーンランド南東ドームアイスコアの高精度年代の構築~

掲載日:2023-10-27
研究
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 金沢大学環日本海域環境研究センターの石野咲子助教,北海道大学低温科学研究所の川上 薫非常勤研究員,飯塚芳徳准教授,的場澄人助教,北見工業大学の堀 彰准教授,国立極地研究所先端研究推進系の藤田秀二教授,青木輝夫特任教授,川村賢二准教授,名古屋大学大学院環境学研究科の藤田耕史教授,植村 立准教授,弘前大学大学院理工学研究科の堀内一穂准教授らの研究グループは,2021 年に掘削したグリーンランド氷床南東部アイスコア(※1)の高精度年代スケールを構築し,産業革命前から現在にかけての夏季積雪融解量が北極域の温暖化に伴い増加したことを解明しました。

 近年,北極域では地球全体を上回るペースで気温が上昇しています。今回研究グループは,複数の物理・化学的な解析から,グリーンランド氷床南東部のアイスコアの 1799 年から 2020 年にかけての時間スケールを,半年解像度という高精度での確立に成功しました。そして確立された年代を元に過去221 年の降水量と夏季融解層の厚さを復元しました。その結果グリーンランド南東部では,年降水量は過去 221 年間にわたり減少も増加も示さず有意な傾向は見られませんでしたが,融解層の厚さは北極域の温暖化に伴い 19 世紀から 21 世紀にかけて増加していることが明らかになりました(下図)。本研究結果は,産業革命(1850 年)前から現在において,温暖化によりグリーンランドの内陸高地で夏季積雪融解量が増加していることを実証しました。今後,得られた地上真値を用いた長期間の領域気候モデルや衛星観測データの検証から,地球気温の将来予測の精度を高めることが期待されます。

 なお,本研究成果は,2023 年 10 月 13 日(金)公開の Journal of Geophysical Research, Atmospheres 誌に掲載されました。

 

ポイント
・グリーンランド南東部アイスコアの 1799 年~2020 年の年代スケールを半年という高精度で確立。
・北極域の温暖化に伴って過去 221 年間の夏季積雪融解量が増加したことを復元。
・融解量増加の実測は観測点の少ない内陸高地の温暖化メカニズムの解明に貢献。

 

     

    図:グリーンランド南東部アイスコアに含まれる1年あたりの融解層の厚さ、再解析データによる南東部の夏の平均気温、北極域の気温の偏差

     

     

    【用語解説】

    ※1: アイスコア
     極地氷床などで鉛直方向にくり貫かれる円柱状の氷試料のこと。

     

     

    プレスリリースはこちら

    ジャーナル名:Journal of Geophysical Research, Atmospheres

    研究者情報:石野 咲子

     

     

     

     

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