エジプトのサッカラ遺跡で古代エジプトの複数の墓を発見

掲載日:2024-2-15
研究

 金沢大学新学術創成研究機構/古代文明・文化資源学研究所の河合望教授を隊長とする金沢大学・エジプト観光考古省の合同調査隊は,2023 年 8 月から 9 月までの調査において,エジプト有数の墓地であるサッカラ遺跡の北部にて初期王朝時代第 2 王朝(前2700 年頃),新王国時代第 18 王朝初期(前 1550 年頃),末期王朝時代(前 7 世紀〜前 4 世紀),プトレマイオス朝時代(前 4 世紀〜前 1 世紀頃),ローマ支配時代前期(前 1 世紀〜後 2 世紀頃)の複数の墓を発見しました。

 本調査隊は,2017 年より新王国時代の墓地をサッカラ遺跡北部の東側斜面にて発掘調査を行なっており,2019 年にはサッカラ遺跡で最初のプトレマイオス朝時代末からローマ支配時代に年代づけられるカタコンベ(集団墓地)(※1)を発見しました。カタコンベは発見後天井の岩盤が脆弱で十分な保護が必要であったことと,コロナ禍により約 4 年間調査が中断したことから,ようやく昨年の 8 月から本格的な発掘調査を再開し,内部で複数のギリシア語が書かれたステラ(石碑)が確認され,カルトゥナージュ製のミイラ・マスク 2 点やテラコッタ製の神々の像などの遺物が出土しました。カタコンベの外の調査では,第 2 王朝に年代づけられる木棺の中に屈葬された人物が埋葬された岩窟墓,第 18 王朝初期の複数の埋葬,ミイラ・マスクを付けた末期王朝時代の埋葬,プトレマイオス朝時代の日干レンガ製の墓,ローマ支配時代のミイラの埋葬などが発見されました。

 発掘区は,これまで全く考古学的発掘調査が行われてこなかった場所であり,今回の調査で,サッカラ遺跡北部の東側斜面に,初期王朝時代から約 3000 年間のさまざまな時代の墓が埋蔵されている可能性が示されました。今後の発掘調査により,サッカラ遺跡における墓地の形成と展開がさらに明らかになることが期待されます。

 なお,本調査研究は,東日本国際大学, 早稲田大学, 近畿大学, 国立科学博物館, 東京都立大学, 東京電機大学, 東京藝術大学, 明治大学, 東京文化財研究所, カイロ・アメリカン大学, イェール大学の研究者と共同で実施されたものです。

 本研究成果は,2024 年 1 月 4 日にエジプト政府観光考古省から公式に発表されました。

 

 

図1:発掘現場遠景(保護用の上屋の下にカタコンベの入口がある)

 

 

図2:カタコンベで発見されたギリシア語が書かれたステラ(石碑)

 

図3:第2王朝の岩窟墓の屈葬

 

 

【用語解説】

※1:カタコンベ(集団墓地)
 イタリア語で地下の墓所を意味する。死者を埋葬した洞窟,岩窟全般を指す。
 

 

プレスリリースはこちら

関連記事:エジプト政府観光考古省 (アラビア語)

研究者情報:河合 望

 

 

 

FacebookPAGE TOP