棒状粒子は、球状粒子に比べマクロファージ捕捉を回避できる

掲載日:2024-6-14
研究

 金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の古寺 哲幸教授は、信州大学学術研究院繊維学系の西村 智貴助教(JST創発研究者)、信州大学大学院総合理工学研究科繊維学専攻の坂本 悠輔大学院生、福島 丈吉大学院生、北九州市立大学の藤井 翔太特任講師、高野 心大学院生、京都大学医生物学研究所の安藤 満助教らとの共同研究で、ナノ粒子(※1)のアスペクト比(※2)の僅かな違いがマクロファージの取り込み量に影響を与えることを明らかにしました。

 マクロファージ(※3)は免疫細胞の一種で,死滅細胞や異物を排除する機能を担っています。例えば,くすりを疾患部位に届ける薬物運搬体(※4)を体内に投与しても,マクロファージに捕捉されてしまい,その多くが目的の部位に到達しないことが知られていました。マクロファージの捕捉は,捕捉される粒子の形に依存することが報告されていましたが,具体的にどの形状がマクロファージからの捕捉を逃れやすいかという知見はありませんでした。そこで,共同研究グループは,両親媒性グラフトポリマー(※5)の自己組織化(※6)を用いて異なるアスペクト比のナノ粒子を作製し,マクロファージに対する取り込みを調べたところ,アスペクト比1の球状粒子は容易に取り込まれるのに対し,アスペクト比2程度の棒状粒子が最も取り込まれにくいことが明らかになりました(図1)。また,この棒状粒子は球状粒子に比べて血中でより長く留まることも明らかになりました。この結果は,薬物運搬体の新たな設計指針になると期待されます。

 本研究成果は,2024年4月25日(現地時間)に米国化学会の学術誌『Nano Letters』にオンライン記載されました。

 

 

図1:  マクロファージが球状粒子を取り込む様子の概念図

 

 

【用語解説】

※1:ナノ粒子
 一辺の長さが1から100ナノメートルの範囲の微小な粒子。

※2:アスペクト比
 形状の縦横比を示す数値。ここでは,ナノ粒子の長さと幅の比率を表しています。

※3:マクロファージ
 免疫系の細胞の一種で,体内の異物や死んだ細胞を取り除く役割を持っています。

※4:薬物運搬体
 薬物を生体内で特定の部位へ効果的に運ぶために使用される材料。

※5:両親媒性グラフトポリマー
 親水性高分子からなる主鎖に疎水性高分子を側鎖として導入した高分子。

※6:自己組織化
 分子が自発的に規則的な構造やパターンを形成する現象。

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Nano Letters

研究者情報:古寺 哲幸

 

 

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