能登半島北東部の温泉水から深部流体成分の混入と化学成分の変動を観測

掲載日:2024-7-19
研究

 金沢大学理工研究域地球社会基盤学系の平松良浩教授と森下知晃教授は,富山大学,東京大学,高知大学との共同研究で,深部流体の供給源が直下に存在すると考えられている,震源集中地域内およびその周辺に位置する温泉を調査し,2022 年以降に顕著な化学・同位体組成の変動を観測しました。

 能登半島北東部を震源とする群発地震が長期的に継続しており,地下深部に存在する流体の挙動が地震の原因となっている可能性が指摘されています。富山大学,金沢大学,東京大学,高知大学からなる本研究チームは,深部流体の供給源が直下に存在すると考えられている,震源集中地域内およびその周辺に位置する温泉を調査し,2022 年以降に顕著な化学・同位体組成の変動を観測しました。これはマントル起源物質を含む深部流体成分の混入率の変化などを反映したものと考えられます。

 本研究成果に関して日本地球惑星科学連合 2024 年大会(開催日:2024 年 5 月 26 日から 31 日)で研究発表(発表日:5月28日)が行われました。予稿は,それに先立ち同学会ウェブサイトにて 2024 年 5 月 17 日(金)(日本時間)に掲載されました。

 これからも調査を継続することで、令和 6 年能登半島地震後のデータを蓄積して地震前のデータと比較し、地震活動に伴い地下で発生した現象の解明を目指します。

 

【本研究のポイント】

・群発地震の震源が集中している能登半島北東部の温泉を定期的に調査し,化学・同位体組成の時間変動を測定しました。
・深部流体成分の混入を示す高いヘリウム同位体比を流体の上昇域直上で観測しました。
・調査の結果,地震活動・地殻変動に伴う、マントル起源物質を含む深部流体成分の混入率の変化などを反映していると考えられるデータが得られました。

 

 

図1: 能登半島北東部における調査地点

○印は本研究の調査地点,×印は202411日に発生したM7.6地震の震央を示します。また,破線部の断面模式図を図2に示します。本図は「地理院地図(電子国土Web)」(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/)で出力した図を修正して作成しました。

 

図2:地点ASY地下における物質循環の模式図

3He/4He比(※1)のデータから推定される地点ASY 地下の物質循環像を示します。本図は Nishimura et al. (2023, Scientific Reports 13, 8381) Figure. 4 を基にして作成しました。


【用語解説】

1:3He/4He
 ヘリウムの安定同位体比をこのように表します。ヘリウムには質量数34の安定同位体が存在し、主に3Heは地球形成時に宇宙空間から固体地球内部に取り込まれた始原的な成分、4Heはウランやトリウムの放射壊変で生成されたα粒子です。マントル中の3He/4He比は地殻や大気よりも高いため、温泉水・地下水中の3He/4He比が高ければ深部(マントル)起源物質の混入率が高いと解釈することができます。

 

 

プレスリリースはこちら

研究者情報:平松 良浩
                           森下 知晃

 

 

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