脳難病発症の仕組みを解明するための突破口を発見!

掲載日:2015-10-21
研究

医薬保健研究域附属脳・肝インターフェースメディシン研究センターの河﨑洋志教授の研究グループは,脳機能の中心である大脳皮質(※1)に異常をもつ希少難病の疾患モデル動物の作製に世界で初めて成功しました。

大脳皮質は脳機能の中心であり,また,さまざまな精神神経疾患に関与すると考えられていることから,脳の中でも特に注目されていますが,大脳皮質に異常をもつ疾患の仕組みについてはいまだ解析が遅れています。本研究グループは今回,イタチ科の高等哺乳動物であるフェレット(※2)に着目し,線維芽細胞増殖因子(※3)を大脳皮質に導入することにより,脳難病の一つ,タナトフォリック骨異形成症(※4)の脳異常(図1右)をもつ疾患モデル動物を作製することに世界で初めて成功。作製した疾患モデル動物の大脳皮質を解析した結果,特殊な神経幹細胞(※5),神経細胞やグリア細胞などが増えていることが新たに分かりました(図2)。これにより,これまで解析が困難であったタナトフォリック骨異形成症の脳病変の仕組みの解明や治療法開発が飛躍的に進むことが期待されます。さらには,本研究で用いた研究技術を応用することにより,大脳皮質の異常をもつ他のさまざまな新しい疾患モデル動物の作製が可能となり,多くの難病の仕組みの解明や治療法の開発への突破口になることが期待されます。

本研究成果は,「Scientific Reports」(英国科学誌)オンライン版に10月20日に掲載されました。

  • <フェレットの脳の外観>左は正常な脳。脳の表面にシワ(隆起)が見られる。右は今回作成に成功した疾患モデル動物の脳。脳表面のシワが乱れていることがわかる。
  • <大脳皮質の断面を染色した拡大図>大脳皮質を特殊染色したあとの顕微鏡拡大図。OSVZ放射状グリアという特殊な神経幹細胞が増えていることがわかった(赤色)。

 

※1 大脳皮質
 大脳の表面に広がる神経細胞が集まる層構造。高次脳機能に重要な役割を果たし,脳の中でも最も重要な部位の一つ。

※2 フェレット
 イタチに近縁の高等哺乳動物。脳が発達しており,脳回を持っているために,今回の研究で採用した。

※3 線維芽細胞増殖因子
 遺伝子の一種。細胞の分裂を増やし,細胞の生存を助ける効果を持つ。

※4 タナトフォリック骨異形成症
 骨格と脳を中心に異常が見られる希少難病。病気が発症する仕組みや治療法はほとんどわかっていない。

※5 神経幹細胞
 神経細胞を生み出す源となる細胞。

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