金沢大学ナノマテリアル研究所のシャヒドウザマン・モハマド特任助教と當摩哲也教授の研究グループは,ペロブスカイト太陽電池の長寿命化とエネルギー変換効率の向上に成功しました。
太陽光発電は,再生可能エネルギーの1つである太陽光を活用した発電方式で,近年ではその普及も進み,私たちの生活に身近なグリーンエネルギーとなっています。現在主流となっているのはシリコンを用いた太陽電池ですが,製造コストが高いうえに,デバイスとして重量が重いという課題があります。ペロブスカイト太陽電池は,高い光吸収率に加え,塗って作れるので低コストという特徴があり,温室効果ガスゼロ排出を可能にする次世代の太陽電池として期待されているデバイスですが,一方で耐久性が低く寿命が短いという問題があり,その解決が重要な研究課題となっていました。
本研究では,ペロブスカイト太陽電池を構成するペロブスカイト膜の上下部分にヨウ化セシウムの層を挿入し,層の厚さを最適化させることで,電池としての寿命が従来のものよりも長くなり,またエネルギー変換率が18.43%へと飛躍的に向上することが明らかになりました。これは,ヨウ化セシウムがペロブスカイト膜に入り込む(インターカレート)することで,膜の結晶子サイズが大きくなり,さらに境界部分の欠陥を除去して良質なペロブスカイト膜になったためと考えられます。
本研究の成果は,ペロブスカイト太陽電池が抱える課題を解決する重要なステップとして位置づけられます。今後は,安定性や性能の向上にともない,さらなる普及につながることが期待されます。
本研究成果は,2020年5月12日に国際学術誌『Nano Energy』のオンライン版に掲載されました。
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UVフィルターなしで湿度40–50% 程度のいわゆる通常大気中での性能変化。ヨウ化セシウムをインターカレートした太陽電池は,従来のインターカレートなしは1千時間程度で駆動しなくなるところを,9割程度の性能保持を4千時間以上もする超長寿命化していることが分かった。