Aspiration#08 丸谷 耕太「地域をつなぐ懸け橋となる」

「まちづくりを地域住民とともに」 ―地域の人々の意気に感じる―

金沢大学 融合研究域 融合科学系
准教授 丸谷 耕太 

建築設計から都市デザインへ

学生時代は、建築学を学んできた丸谷准教授。やがて、建物をつくり出すことからまちづくりへと、その関心が移っていった。そのきっかけは地域の社会問題を解決したいという思い。そこに住む人々はもちろん、訪れる観光客たちも満足できるまち、笑顔になれる都市空間をデザインすることが社会貢献につながると話す。 丸谷准教授の現在の研究テーマは、「観光」、「まちづくり」、「工芸」の3つを軸にしたランドスケープ(景観)とコミュニティ・デザイン。しかし、あくまでもその主役はヒトである。行政や専門家だけが主体となってつくるのではなく、実際にその空間を利用する多様な人々の思いや知恵を取り入れ、地域住民と一緒に活動することが重要であると語る。観光資源に恵まれ、伝統文化が色濃く根付く、石川、金沢の「地の利」を活かして、さまざまなまちづくりプロジェクトを仕掛ける。

都市デザイン~与えられるものではなく、ともに取り組むまちづくり~

最近、丸谷准教授らが取り組んだのが、石川県輪島市で開催された「黒島・福浦アートプロジェクト」。アートプロジェクトとは、アーティストたちが会場となるまちの風土や歴史を読み解き、アートという形で表現・発信するイベント。丸谷准教授は、地域住民の視点に立ち、学生とともにプロジェクトの効果をさらに高める活動に取り組んだ。その取り組みの一つが学生たちの発案で製作した「まちあるきマップ」。アートで彩られたまちを散策しながら、まちについてより深く知ることができたと、観光客だけでなく、地域住民にも好評であった。  丸谷准教授が専門とする「都市デザイン」は、 都市空間の設計に関する広い領域を対象とする。丸谷准教授は、特に地域との連繋に重点を置き、「まち」の望むべき将来をともに考え、環境や空間、まちづくりに関する地域活動などの形で、それらを具体化していく。「住民参加のまちづくりが都市デザインの構想には不可欠」と丸谷准教授は語る。まちづくりは、長年にわたって実現していくものであるからこそ、その地域に住むさまざまな人たちと一緒に考え、一緒に活動することが大切だと考えている。

地域と地域の懸け橋を目指して

丸谷准教授が大切にするコトバは「地元の人たちの意気に感じる」。研究のモチベーションは、「地元の人たちが幸せそうな顔になること」である。「こんなことをやりたい、でも実際にはできない。そこに私が関わることで、一緒に実現できるようにしたい」と話す。以前は、全国を対象に研究活動を行っていた丸谷准教授だが、金沢大学への着任をきっかけに、現在は石川県内のさまざまなプロジェクトに関わっている。住民と専門家、住民と行政、さらには地域と地域とをつなぐ懸け橋になり、“地域住民とともに”地域における社会と空間の問題を同時に解決することが、丸谷准教授が目指す「都市デザイン」。丸山准教授の今後のさらなる活躍に注目したい。

(サイエンスライター・見寺 祐子)

ー令和6年能登半島地震、奥能登豪雨を受けてー

丸谷准教授は、令和6年能登半島地震を受け、輪島市門前町商店街への支援、珠洲市真浦町の現代集落プロジェクト推進、 穴水町仮設住宅の支援や、和倉温泉における復興計画のアドバイザーを務めるなど、 能登地域の創造的復興に向けての活動に精力的に取り組んでいます。

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