ブックタイトル金沢大学広報誌|アカンサス No.39

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金沢大学広報誌|アカンサス No.39

世界に広がる金沢大学の研究ネットワークInternational Research Network薬は病気を治すために服用されますが,本来の効果が現れなかったり,副作用が出たりと,薬から受ける作用は個々人によって異なることがあります。その理由を理解するためには,薬の成分が体に入ってから出ていくまでの動き「薬,物動態」の解明が重要です。本事業では,米国やオランダの連携研究機関に若手研究者を派遣して,重篤な医薬品毒性事例における毒性発症機構と薬物動態特性に関する共同研究を行い,副作用発症までのメカニズムの解明に取り組みました。副作用として肝障害が報告されているいくつかの医薬品を対象に調べた研究により,毒性の原因となる代謝物ならびにそれを生成する代謝酵素※1が同定され,毒性メカニズムに関する新たな知見を得ることができました。また,抗がん薬の使用により現れる発疹や色素沈着などの皮膚障害には,薬物トランスポーター(薬物を運んで細胞への出し入れを担うタンパク質)が関わっていることを明らかにし,抗がん薬の副作用を事前に予測できるバイオマーカーとして特定の遺伝物質(microRNA)を同定しました。事業終了後も共同研究推進のための国際ネットワークを拡充しており,医薬品の安全性研究のさらなる発展が期待されます。※2薬物動態・輸送・代謝・毒性の分子論的評価1.医薬品毒性機構解明2.薬物動態評価金沢大学グループ動態・安全性研究拠点毒性情報動態情報3.医薬品毒性の定量的予測予測モデル構築米国Dr.Schuetz(St.Jude Children’sResearch Hospital)病態や毒性の分子機構解析共同研究の連携体制米国Dr.Gonzalez(National Institutesof Health)バイオマーカー(BM)オランダDr.Schinkel(The NetherlandsCancer Institute)in vivo評価モデル動物※1同定:対象物質を特定すること。※2バイオマーカー:病気や健康状態の指標となる生体成分。細胞毒性発症の分子機構解明毒性発症機構解明とその診断・予知BMの探索定量的毒性予測のための動物モデルの構築05PROJECTがんの悪性化進展研究に関する国際研究拠点形成と若手研究者育成(平成25年度~平成27年度)世界のがん研究をけん引がんを治る病気にがん進展制御研究所事業代表者:大島正伸教授金沢大学がん進展制御研究所は,がん幹細※1※2胞とがん微小環境研究領域における実績から,文部科学省の「共同利用・共同研究拠点」に認定されています。がん幹細胞とがん微小環境は共にがんの転移・再発過程に代表される悪性化進展に重要な要素です。本事業では,この2領域においてトップクラスの研究を進めている米国の研究機関に若手研究者を派遣し,本学がん進展制御研究所を転移・再発などのがん悪性化進展制御研究の国際研究拠点として発展させることを目指して,共同研究を行いました。がん幹細胞領域では,白血病幹細胞の自己複製制御機構の解明と新規治療法開発を課題として研究を進め,ある標的薬の組み合わせが,特定の染色体異常を有する白血病モデルに対して強く作用し,白血病の治療戦略として効果的であることを見いだしました。また,がん微小環境領域では,肺がんやすい臓がんに特に見られ,薬が効きにくいとされている遺伝子変異「K-ras変異」に着目して研究を行い,薬が効きにくいメカニズムに分泌因子(細胞外に出るタンパク質)が関係していることを明らかにしました。今後,さらに共同研究を進め,治療が困難とされるがんに効果のある新規治療薬の開発を目指し,世界のがん研究をけん引していきます。K-ras変異によるがん微小環境形成機構および肺がん悪性化機構K-ras変異発がん促進TBK1活性化炎症性微小環境→→IL-6 CCL5※1がん幹細胞:がん細胞のうち,分裂して自身と同じ細胞を作り出す性質を持つ細胞で,転移・再発の原因と考えられている。※2がん微小環境:がん細胞周囲に作られる環境のことで,がん細胞を育てる作用がある。39 7

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