ブックタイトル金沢大学広報誌|アカンサス No.39
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金沢大学広報誌|アカンサス No.39
06PROJECT次世代の国際深海掘削科学を牽引する国際研究組織形成と研究リーダー・教育者育成(平成24年度~平成26年度)「人類初のマントル掘削」へ地球の謎の解明に挑む国際基幹教育院GS教育系事業代表者:荒井章司特任教授深海掘削科学は,固体地球活動の解明を目的とした基礎科学でありながら,防災・減災につながる社会的役割も担う総合巨大科学へと成長しています。しかし,人類はいまだか※1つてマントル物質を直接採取することに成功しておらず,地球環境変動の本質の解明にも至っていません。本事業では,本学が国際的な研究実績を有する「海洋底深部の物質循環」と「気候・環境変動」をテーマに,深海掘削科学を国際的にリードする米国,フランス,カナダの研究機関に若手研究者を派遣し,国際共同研究を通して地殻・マントルの構造や白亜紀の気候変動要因の解明を目指※2しました。その結果,オフィオライトなどの岩石の調査によって,地殻やマントル,それらの境界面の実態解明が進展。また,カナダ太平洋岸で調査を行い,これまでの想定とは異なる地球環境システムが白亜紀に存在していた可能性があることを示す実績を挙げました。派遣研究者らは,本事業で構築したネットワークを拡大し,多様なフィールドで国際共同研究を実施し,「人類初のマントル掘削」の実現を目指しています。大規模な国際共同研究をリードしていく研究者として,今後のさらなる活躍が期待されます。フランスの研究者と共に岩石を分析する様子※1マントル:地球内部の分類の1つで,地殻と核との中間層を指し,地球の体積の約80%を占めている部分。※2オフィオライト:地球上の造山帯に見られる多様な岩石の層状複合岩体で,過去の海洋性地殻~マントル上部が造山運動によって大陸地殻に衝上したものと考えられている。07PROJECT文化資源学国際コンソーシアムの構築(平成22年度~平成24年度)文化資源学研究の高度化とネットワーク構築を目指す人間社会研究域歴史言語文化学系事業代表者:藤井純夫教授文化資源学とは,世界各地の有形・無形の文化遺産を「文化資源」と捉え直し,その総合的・多角的な研究と保護・継承・活用法の開発を目指す学問分野です。本事業では,若手研究者を海外6カ国,計8研究機関に派遣。共同研究を行うことで,文化資源学研究の高度化とともに,派遣先研究機関とのネットワーク構築を図りました。派遣研究者らは,考古学,文化人類学,美術史,音楽といった各自の専門分野に沿って研究に従事。アルメニアやインドなどでの発掘調査や,中国から東南アジアにかけて分布する少数民族の宗教変容に関する調査などのフィールドワークを通して,各自の研究を深化させるとともに,地元の研究者や学生向けのワークショップによって学問的知識を実社会に還元する道を探るなど,さまざまな試みを行いました。本事業において共同研究を行った各研究機関は,現在,本学の国際文化資源学研究センターによる国際共同研究プロジェクトの対象研究機関として,さらには文化資源マネー※ジャー養成プログラムの連携機関として機能しており,研究・教育の両面で国際ネットワークを活用した人材交流が図られています。こきょう中国で調査を行った跨境民族の祭りの様子※文化資源マネージャー養成プログラム:文化資源マネジメント能力を有する人材の育成を目的とした,本学人間社会環境研究科の5年一貫の特別プログラム。8 39