ブックタイトル金沢大学広報誌|アカンサス No.42
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金沢大学広報誌|アカンサス No.42
ナノ生命科学研究所~生命科学における「未踏ナノ領域」開拓への挑戦~平成29年,本学は,世界的に優れた研究環境と極めて高い研究水準を誇る「世界から目に見える研究拠点」の形成を目指す文部科学省「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」の採択を受けて,ナノ生命科学研究所を設立しました。本研究所を拠点とした生命科学における「未踏ナノ領域」開拓への挑戦の始まりです。ナノスケールで解明する生命現象の真理人類はこれまで,さまざまな顕微鏡を発明し,“目に見えない小さな世界を観る”ことで,あらゆる物性や現象の起源を学び,科学を発展させてきました。しかし,原子や分子というナノスケールでの構造や動態は未だ直接観ることができない「未踏ナノ領域」であり,探索技術の開発が強く望まれています。私たちの体を構成する細胞の表層や内部には無数の分子が存在し,多様な形でさまざまな役割を果たしながら生命現象を生み出しています。そのため,これらの分子の動きや相互作用を観ることが,生命現象の仕組みの理解と制御の鍵となりますが,現在の科学技術では実現に至っていません。本研究所は,この生命科学における「未踏ナノ領域」を開拓することにより,あらゆる生命現象の根本的な理解を目指します。分野融合型研究で生命科学分野に革新を本研究所には,ナノ計測学・生命科学・超分子化学・数理計算科学の4つの研究分野において,長年にわたって世界的に高い水準の研究実績を挙ナノ生命科学研究所長たけし福間剛士教授げてきた研究者が集結しています。最先端の走査型プローブ顕微鏡(SPM)技術を基盤に,4つの研究分野を融合・発展させ,細胞の内外で重要な役割を担う分子がどのように位置し,働くかを直接観察し,分析・操作できる「ナノ内視鏡(ナノプローブ)技術」を開発します。未だ観たことのない生命現象を観ることにより,生命科学分野に飛躍的な進展をもたらすとともに,新しい学術領域「ナノプローブ生命科学」を創成します。※※走査型プローブ顕微鏡(SPM):先端を非常に細くした探針を用いて,観察対象となる物質の表面近傍をなぞるように動かすことで,表面形状や物性を計測する顕微鏡。世界唯一の研究拠点として本研究所設立以来,それぞれの研究分野の研究者が,互いの考え方や視点,方法論を持ち寄り,議論を重ねる中で,相互理解を深めています。各分野が世界をリードする研究を一層進展させるとともに,互いにその知見や研究力を生かすことにより,本研究所で集結したからこそ生まれてくるアイデアを育て発展させたいと考えています。そして,世界唯一の研究拠点として,新たな発見や概念を次々に生み出し,科学技術の進展につなげていくという循環を創り出したいと強く思っています。4 42