ブックタイトル金沢大学広報誌|アカンサス No.46
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金沢大学広報誌|アカンサス No.46
人の学びを後押しする文部科学省「職業実践力育成プログラム」認定事業能登里山里海SDGsマイスタープログラム平成19年度に前身となるプログラムを開始して以来,石川県および珠洲市・輪島市・穴水町・能登町との共同運営の下,世界農業遺産「能登の里山里海」の発信や能登地域の課題解決に取り組む人材を育成してきました。平成30年に珠洲市が「SDGs未来都市」に選定されたことを受け,環境保全・経済成長・社会的包摂というSDGs(持続可能な開発目標)の3つの観点からプログラムを再構築。今年度から,地域の実態を踏まえた里山里海の新たな価値の創造に加え,SDGsに関する学びに取り組むカリキュラムを展開しています。これにより,自然と共生する持続的な社会モデルである「能登の里山里海」の発展,さらにはSDGsの理念である「誰一人取り残さない」社会の実現に貢献します。地域・社会と手を携えて幅広い知識の習得とフィールドワークを重視したカリキュラム金沢大学能登学舎を拠点に,約10カ月間のプログラムを通じて,自然・文化・社会・経済といった幅広い観点から「能登の里山里海」に関する学びを深めます。修了者には「能登里山里海SDGsマイスター」の称号が授与されます。講義・実習科目課外科目卒業研究・プロジェクト研究地域づくりの実践者や学術機関の研究者,企業代表者などで構成される講師陣が,それぞれの専門から多面的な切り口で講義を展開。また,能登の里山里海をフィールドに,その現状や課題を理解し,課題解決の可能性を探ります。能登地域の伝統的・先進的取り組みを体得する「能登の里山里海調査実習」や,地域資源の保全・活用を地域づくりに生かす他地域の取り組みを学ぶ「先進事例調査実習」を通じて,能登地域の活性化への応用可能性を考えます。受講生一人一人が独自に研究テーマを設定。主体的な調査や実践活動,講師や受講生らとの議論を通じて研究を磨き上げ,能登の里山里海が抱える課なりわい題の解決につながる地域づくりや生業づくりなどを成果報告会で提案します。受講生の声珠洲市地域おこし協力隊馬場千遥さんプログラムスタッフとして先端科学・社会共創推進機構伊藤浩二特任准教授私自身も珠洲市に移住し,地域おこし協力隊として移住促進を担当する中で感じたのは,集落固有の風習や慣習が移住・定住のハードルとなっていることです。そこで,卒業研究のテーマとしたのは,地域で暮らすために必要な情報をありのまひきまに伝える「集落の教科書」珠洲版の制作。人口減少に悩む同市日置地区を対象に,複数の先行事例を分析した上で意見交換会や調査を実施し,地域住民と移住者双方のニーズを反映して編集を進めています。移住先選びの検討材料や地域に溶け込むための手引きとして活用されるとともに,地域住民が地元を再認識する契機となることで「集落の教科書」が,地域住民と移住者をつなぐ架け橋となり,移住・定住地域住民や移住者と掲載項目者の増加につながれば嬉しいです。について意見交換10年以上にわたりプログラムを継続してきた中で,地域とのつながりを強固なものとし,地域課題の解決に向けた実践的な学びを提供できる基盤を構築してきました。さらに,能登地域に根付き,地域資源を生かした生業づくりを実践する修了生が現受講生の調査・探究の場を提供するなど,人材育成の好循環が生まれています。プログラムでの学びを通じて,受講生が地域の魅力を引き出す課題解決力とさまざまな知見を習得し,能登地域に限らず,同様の課題を抱える国内外の地域の活力を生み出す人材として活躍することを願っています。469