本日ここに心晴れやかに入学宣誓式を迎えた新入生の皆さん,ご入学誠におめでとうございます。ただいま,学士課程1,848名,大学院課程792名,別科33名の入学許可を宣言いたしました。2,673名の皆さんは本日から金沢大学の学生です。ようこそ金沢大学へ。金沢大学の教職員を代表して,皆さんを心から歓迎いたします。また,今日という素晴らしい日を心待ちにされていたご家族の皆さまにも心よりお慶びを申し上げます。
希望を胸に入学した皆さんの前途には,洋々たる未来が開けています。金沢大学の学生となることを誇りとしてください。みずみずしい好奇心を持って高みを目指し,さまざまなことに挑戦してください。このたび,晴れて入学式を迎えることができたのも,ご家族,先生方の温かい励ましのお陰と思います。このことも心に刻みながら,金沢大学の一員としての自覚を持ち,ぜひ実りある素晴らしい学生生活を過ごしてください。
現代は,気候変動,政治経済,食糧・飢餓,健康など地球規模で取り組むべき多くの課題があります。平和問題でも国際的な大きな懸念を抱えています。AI,ロボット技術などの第4次産業革命の進展,デジタルトランスフォーメーションによる産業構造の変化も加速しています。さらに,新型コロナウィルス感染症による長引くコロナ禍が国内外の社会に多大な影響を与えています。この2年間で社会生活は大きく様変わりしました。デジタル環境の技術革新,サイバー空間での情報共有が加速し,仕事,居住などの生活様式の在り方も変化しています。こうした大きな社会変革のなか,皆さんは金沢大学に入学しました。大学で何を学ぶのか,ぜひ一緒に考えていきたいと思います。大きく社会構造や価値が様変わりしている今こそ,大学での学びが将来のかけがえのない財産につながるように感じます。
こうした社会変革が大きく進む社会において,私から金沢大学で学ぶ三つのヒントをお話ししたいと思います。
まず,第一に「人との出会いを大切にしよう」です。
人は人から多くのことを学びます。熱意を持つ人との出会いは重要です。世界の「知」に広く開かれ,活気がある金沢大学での学内外の出会いを大切にしてください。ぜひ,誠実な関心をもって,さまざまな方とコミュニケーションをとってみてください。一生の付き合いになる方にきっと巡り会えるでしょう。そのためにも相手とともに,自分自身にも関心を持つことが重要です。私自身も40年前に皆さんと同じく期待に胸躍らせて金沢大学に入学しました。金沢大学時代の友人や活動を通じて成長できたと思います。40年経っても同級生,当時の仲間と交流があり,かけがえのない人生の宝です。現在,コロナ禍のため,対面にて話をする機会も減りました。このようなときであるからこそ,お互いに膝をつきあわせた対話,何気ない雑談が重要だと感じます。金沢大学の学生生活のなかで,偶然の出会いが必然であった,と将来心から思えるような出会いがあることを願っています。
二つ目は「自分で考えてみよう」です。
高校時代までは,学びのなかで,模範解答が準備されていたと思います。しかしながら,よく言われていますように,現在の社会課題は模範解答が用意されているわけではありません。実社会では答えがない,あるいは正解が一つとは限らないことも多いと思います。模範解答のない社会で,未来を切り拓いていくために,現代,さらに未来の課題を探求し,自ら問いを見出すことが大切です。現在の教科書もいわば過去の知の結集です。明日の教科書の中身は目の前の事実や課題にあると思います。仮説を立て,エビデンスをもって検証し,妥当性があるか,考え抜くことが重要です。これこそ大学教育の要のひとつです。金沢大学で学ぶ重要なポイントだと思います。金沢大学での学生生活のなかで,課題に向き合う経験を積み重ねることは,必ず皆さんの人生を支える財産となるはずです。次代を担う皆さんは,壁を乗り越える強い志を土台とした「人間力」と,あらゆる知を融合した「総合知」を身につけてください。自分こそが課題を解決し,より良き社会を創造するという気概や志を持ち,社会を切り拓いていって欲しいと願っています。志高く,未来の課題を探求し,その克服に貢献する知恵「未来知」を創造する人材に育ってほしいと思います。明日の教科書や未来のあるべき社会を構築するのは皆さんです。自分と未来は変えられる,そして未来は自分で創るものであるとお伝えします。金沢大学では学生が自ら学び,育つ教育を進め,学生が自ら考えることへの支援体制も強化しています。
三つ目は「他流試合をしよう」です。
学生諸君には他人の釜の飯を食う,他流試合をする経験を金沢大学在学期間に持って欲しいと思います。見える風景が変わってくると思います。ぜひ,他流試合を勧めたいと思います。私自身も短い期間ではありましたが,海外での留学生活はとても印象的でした。多様な価値観も生まれてくるように感じました。国内外のさまざまな環境やステークホルダーの方々と協働をしてみてはいかがでしょうか。異なる環境の方と接することにより,違った角度からの新鮮な視点が得られるように感じます。
これから皆さんが学ぶ金沢大学は,加賀百万石の歴史と豊かな伝統文化が醸成された学都金沢という素晴らしい環境にあります。加賀藩彦三種痘所を源流とし,旧制第四高等学校等の前身校から受け継いだ百六十年の歴史と伝統もあります。本学は,金沢大学憲章において「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を基本理念に掲げています。これに立脚した学士課程・大学院課程それぞれの育成人材像を「金沢大学<グローバル>スタンダード(KUGS)」として示しています。これらの修得を後押しするため,分野融合型のリベラルアーツ教育や科学・技術・工学・数学などのいわゆるSTEAM教育を強化するとともに専門性を高めるように努めています。
さらに,本学はナノ生命科学研究所をはじめとする世界トップ水準の研究拠点を複数有しています。これらの高度な研究推進力を基盤に,専門分野とともに学際的な知見を学び,課題の全体像を俯瞰的に見通す力をつけてほしいと思います。専門外の学び,自分にはない世界観や知見を持つ人との交流,そうした「越境体験」に自ら積極的に踏み出してください。これらを通じて皆さんが深い教養と高い能力を身につけ,課題解決に貢献する「未来知」を創造してほしいと願っています。皆さんがあるべき社会を先導する人間力を持った「金沢大学ブランド人材」となることを期待しています。
希望ある未来の社会を拓くのは,皆さんです。皆さんの可能性は無限に広がっています。教職員一同,全力で皆さんをサポートします。志を高く持って,金沢大学での充実した学生生活を送ってください。ご入学,誠におめでとうございます。
令和4年4月4日
金沢大学長 和田 隆志