金沢大学の国際化,グローバル化の取り組みを行う中で, 連携は無限大。
あらゆる「!」との絆のもとに。
*KU-SGU Student Staffインタビュー企画*
国際基幹教育院 准教授
KU-SGU Student Staffインタビュー企画は、国際経験が豊富な本学教職員、学生等に学生目線でインタビューを行い、インタビュー対象者の経験や考えなどを本学学生等に広く知ってもらうことを目的としています。
第六弾では、国際基幹教育院の菊谷まり子准教授にお話を伺いました。
-初めに、先生の研究内容について教えてください。
私は、心理学の中でも認知心理学を専門に研究しています。認知心理学とは、外の世界をどのように理解するのか、例えば、記憶や知覚、集団理解などが研究対象になります。そして、私は、認知心理学の中でも主に顔の認知について研究しています。具体的には、どのような顔を魅力的だと思うのか、人はどのように顔を覚えるのか、どのように表情を読み取るのか、ということです。博士課程では顔に関する研究を行っていましたが、最近は感情とはなにか、ということを主に研究しています。文化における感情の比較も行っています。
-心理学の研究を始められたきっかけは何ですか。
高校生の頃はカウンセラーになりたいと思っていました。いじめが表沙汰になり、問題視されていく中で、いじめられる人といじめる人は何が違うのか、なぜいじめが起きるのか、ということが気になりました。そして、いじめる側の人の心理や、いじめを解決することに興味を持ちました。
-イギリスの大学院に留学された経験があるとのことですが、きっかけは何ですか。
英語と心理学を勉強したい、と考えた際に留学を視野に入れました。大学に入学した当時は留学を考えていませんでしたが、大学の授業を通して、英語の必要性を感じ、英語をもっと勉強したいと思うようになりました。同時に、私は福祉学部の学生だったので、心理学の授業を心理学部生のように受講していなかったこともあり、心理学を深く学ぶためにも留学を決意しました。そして、元々イギリスの音楽や文化に憧れを抱いていていたので、留学先にはイギリスを選びました。又、大学時代に英語に興味を持ち、自分で英会話スクールに通い始めました。アルバイト先と近いという理由から選んだのですが、イギリス英語に特化した英会話スクールでした。イギリス英語特有の響きなどに魅力を感じ、イギリスに留学することを決めました。
-イギリス留学において、学校生活はどのようなものでしたか。
課題の量がとても多かったです。事前に教科書を読む必要があったのですが、分量が多かったです。教科書は大体15章になっていて、1回の授業で1章進む、という形になっています。教科書の1章は20ページから30ページありますし、授業はいくつかあります。大体の学生は事前に教科書を読んでおり、できる人は付属の参考文献も加えて読んでいました。読む量が日本とは全然違いますね。また、レポートは学期に2回課され、試験は全て記述式でした。試験はトピックを選び、それについて論じる、というものでした。科目数は日本よりも少ないですが、知識量はかなり高いものを要求されました。
-学校生活以外で印象に残っていることはありますか。
生活費を自分で稼ぐために学校のコンビニで週4回アルバイトをしていました。勉強と両立させることは大変でしたが、友達作りや、英語の練習ができたので良かったと思っています。また、特に大学院においては様々な人がいました。子どもが育ちざかりの時は仕事をすることが難しいということで、同級生にはお母さんとして、子育てをしながら大学院に学びに来ている人が多かったです。加えて、様々な国から学生が来ていました。日本では同じようなステップを歩んだ人としか日常で触れ合う機会がないと思います。しかし、イギリスでは様々な年齢、国の人たちと会話することができ、とても面白かったです。多種多様な人生に触れることはとても衝撃的で心に残っています。
-どのように英語を身につけられましたか。
英語をたくさん聞き、真似をすることが重要だと思います。私はイギリス留学のためにTOEFLのテストを受ける必要がありました。TOEFLには大学の授業の内容に関するリスニングがあります。私はTOEFL用の教材を何回も何回も聞き、シャドーイングを繰り返したことで英語が上達したと思います。また、実際に現地に行くと、外国語を使って自分の言いたいこと相手に伝えることの難しさを改めて実感します。ネイティブの友達の口調を真似することもおすすめですが、海外のドラマのセリフの真似することも効果的だと思います。セリフの真似は恥ずかしいかもしれませんが、現地では留学生に完璧さを求めている訳ではないので、気を遣わず自分が理解できた分から会話を広げていけば大丈夫です。
-日本とイギリスが文化的に異なっていると思うことは何ですか。
日本は良い意味でも、悪い意味でも細かい所に気を遣うと思います。良い所としては、日本では請求書の間違いや、スーパーの値札が違う、ということは無いですよね。しかし、日本は形骸化したルールをきちんと守ることを通して、ルールに押しつぶされるなど、人の生きにくさを作り出してしまっていると思います。一方、イギリスではルールであったとしても、自分の納得のいかないものには声を上げます。先生に対してテストの点数の文句を言ったりしますね。そして、声を上げる際にはきちんと議論をします。日本では自分が間違ったことを言っていなかったとしても、相手の気持ちを害してしまうのではないか、と反対意見を押さえつけてしまうことがあると思います。しかし、大切なのは言い方なのではないでしょうか。イギリスのように、互いに中立な立場から議論をすることも必要なことだと思います。
-外国で学ぶことのメリットは何ですか。
若い時に外国で学ぶことは本当にメリットがあります。自分とは何なのか、ということを固めることが重要です。学生のうちに自分の価値観とは何なのか、自分は何を好きなのか、ということを固めておかないと、その後大変になると思います。心理学的な観念も入るのですが、私たちの人生は自分の行動の積み重ねです。つまり、一つ一つのことに関して決断をしています。例えば、今お皿を洗うか、今外に出るか、極端に言えば2択くらいの選択を立て続けに行っていくことで人生は成り立っています。結局、生きやすさと生きにくさというのは自分に合った決断、自分がしたいと思った決断ができているか否かによります。そして、正しい決断というのは自分がどのような人であるかによって変わってきます。だからこそ、自分を知ることはとても大切になってきます。外国に行くと、自分が今まで当たり前だと思っていたことを客観視せざるを得ないです。客観的に捉えることを通して、自分とはこういう人間なのだな、ということに辿り着くことができると思います。加えて、言語のレベルがかなり高くないと嘘をつくことが難しいです。つまり、外国語を用い、自分の言いたいことしか言えないことで見えてくるものがあります。気の遣い方や柔らかい表現が分からないからこそ、物事をストレートに言うしかない、という場面もあると思います。そしてそれを積み重ねていくと、自分の本当の姿というのが浮き彫りになってきます。私も7年くらいイギリスに行き、自分への理解は相当深まりました。また、イギリスの飾らない文化の中で自分の素でいることも磨かれたと思います。
-留学など、新しいことに挑戦する際に大切なことは何ですか。
何を挑戦と考えるかは人によって異なると思いますが、挑戦する際に戸惑うのはリスクがあるからなのではないでしょうか。そして、リスクのウェイトを決めるのは、自分が生きている、自分が注意を払っている人生の中の時間がどこにあるか、ということだと思います。つまり、未来を考えると、未来にあるリスクを避けたいと思うようになります。しかし、今が楽しければよい、という人にとっては、未来に起こるかもしれないリスクはあまり重要なものではありません。自分がどこに時間軸を置いているのか、ということが一つのポイントになります。私はどちらかというと、明日何が起きるか分からない、という考えで生きています。私は、イギリスに留学することによって、日本の大学院に行くことは諦めなければなりませんでした。そして、カウンセラーの資格の道はほとんど閉ざされてしまいます。しかし、留学は今しか行くことができない、英語を勉強すればそこから続いていくものもあるはずだ、という想いで留学に行きました。未来のことを考えていては、今何をしないといけないのかが分からなくなってしまうと思います。また、色々な危機は、そのときにならないと対処の仕方が分からないと思います。だからこそ、私は挑戦ということを考えた際に、今やりたいかどうか、ということを考えるようにしています。心理学的な話になるのですが、人間の未来の予測はとても不正確です。例えば、欲しいものを貰えたらどのくらい幸せか、ということを想像してもらいます。しかし、実際に欲しいものを手に入れると、普通は自分が想像していた幸せの度合いよりも低いものとなっています。未来のための挑戦であっても、考えるべきは今の気持ちです。たとえ失敗したとしても、その時挑戦したいと思った気持ちがとても強みになると思います。後悔しないためにも、私は挑戦する時の主軸を今に置くことがポイントになるのではないかと思います。
-学生の間にやっておくべきことは何ですか。
学生時代には自分とはどのような人間なのか、ということを理解することが重要です。そのためには、様々なことに挑戦することが大切だと思います。今の大学はとても手厚いサポートが整っています。金沢大学では図書館でも様々なイベントが行われていますし、講演会も沢山開催されています。提供されているものを貪欲に取り込もうとする姿勢が大切だと思います。今は企業の就職においても大学で何をしてきたのか、どのようなスキルがあるのか、ということが問われる時代です。だからこそ、学生の皆さんには様々なことに挑戦してほしいと思います。また、本も沢山読んでほしいと思います。今はインターネットで簡単に調べものができる時代ですが、自分の専門分野は図書館にある本棚を見て、これは読んだ、これも読んだ、と言えるようになってほしいです。本は探していたピンポイントのものがすぐに見つかる訳ではありませんが、だからこそ、探しものの途中でほかに面白いものを見つけることができます。加えて、自分を理解するためには、やはり単純に頭の中で思考することも大切です。インターネットやスマートフォンの発達により、何もしないでぼーっと考える時間が少なくなっているように思います。そして、きちんと思考している人とそうでない人は数年後に大きな差がつくと思います。
-先生にとってのグローバル化とは何ですか。
世界がインターネットや交通手段の発達によって繋がりやすくなったことでグローバル化が進んだと思いますが、実際には、様々な人がやり取りをする際に共通の基盤があることが1つのグローバル化なのかな、と思います。例えば、論文には、引用の仕方など定められた形式が存在しています。決まりがあるからこそ、様々な国の人が1つのことについて論じることができます。グローバル化とは、共通のものを理解し、その上で社会全体をより良いものにしていこうとする動きだと思います。そして、共通の基盤の価値観を理解した上で自分の文化の個性を持つことも大切だと思います。
-グローバル人材になる為に必要なことは何だと思われますか。
まず、グローバル人材とは、他者の視点を取れる人だと思います。相手は自分とは異なる視点を持っている、ということを理解できているか、ということが重要です。その視点を持った上で、言語や地理、文化などの世界に関する知識を広げようとする熱意が大切だと思います。また、他者の視点を取りつつ、自分が個人としてやり遂げるべきことを理解していることも必要です。
-最後に、金大生へのメッセージをお願いします!
金大生は勤勉ですが、少しおとなしい所があると思います。しかし、グローバル化を考えた際に、海外の迫力というのは凄まじいです。グローバルな世界で生き残っていくためには、金大生の繊細さを残しつつ、図太い人になってほしいと思います。言われたことに対し、すぐにへこむのでは無く、何か言い返せるくらいの強さをもって頑張ってほしいと思います。
-菊谷先生、ありがとうございました!
【金沢大学研究者情報】
〈編集後記〉
鈴木晴日(総合教育部文系1年)
今回、菊谷先生にインタビューさせていただき、貴重なお話を沢山伺うことができました。その中でも特に、「学生の間に自分とは何なのかを固めることが重要である」というお話と、「今という時間を大切にして挑戦するべきである」というお話がとても心に響きました。私は、何かに挑戦しようとしても、躊躇ってしまうことがあります。しかし、菊谷先生のお話を通して、金沢大学の学生である、というこの瞬間を大切にしながら、積極的に前に進んでいきたいと思いました。
※KU-SGU Student Staff:本学のスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)を学生目線で推進する学生団体
(2023年1月取材)
*KU-SGU Student Staffインタビュー企画*
名誉教授
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人間社会研究域 人間科学系 教授
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ホイットニー・サリバン さん
金沢大学国際基幹教育院外国語教育部門
特任准教授
マーク・ハモンド さん
タフツ大学
International Student and Scholar Advisor, Internatiolnal Center
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